【サッカー】神戸DF酒井高徳の弟・高聖さん 兄弟で営むカフェがコーヒー好きをうならせる人気店に
神戸・御影の閑静な住宅街。外階段を降りて半地下のドアを開けると、開放的な空間にコーヒーの香りが漂う。カフェ「ALSTER&GARTEN(アルスター・ガーテン)」を切り盛りするのは、J1神戸DF酒井高徳の弟、高聖さん(28)だ。自身もJリーグやドイツリーグでプレーし、2022年6月に引退。カフェ業に転身した。
現役引退は、選手として脂がのっていた26歳。「パフォーマンスはサッカーキャリアの中で一番いいタイミングだった」というが、背景にコロナ禍による心理状態の変化があったという。「コロナ期間に半年から1年近く、ちゃんとサッカーができなくて、勝ったり負けたりした後の感情やプレーがうまくいった時の感情が、今までわき上がっていたはずのものがわき上がらなくなってきた。これでは惰性でサッカーを続けるだけだと思った」と、気持ちが乗らない状態に戸惑った当時を振り返る。
ちょうど、高徳がカフェ事業を考えていたこともあり、高聖さんは引退して日本で経営に携わることを決断。「高徳に相談したら『(サッカーを)やり切ったんならいいんじゃないか』と言われ『今、カフェをやろうと思っているけど、どうする?』みたいな感じで話をもらった。元々、ドイツに(サッカー選手として)引っ張ってくれたのも兄だし、恩返しとしてカフェ事業を成功させたいと思ったんです」と潔く転身した。
商売やコーヒーの知識は皆無という状態からスタート。最初は経営もうまくいかなかった。ただ、兄弟ともにカフェやコーヒーが好きで、トライアンドエラーを繰り返すうちにリピーターを獲得。アメリカーノはまろやかで飲みやすく、エスプレッソは香り高い。健康的な素材にこだわったベーグルサンドイッチや手作りケーキなど、フードメニューも充実している。「僕自身、苦いコーヒーはあまり好きではないので、苦みを抑えつつコーヒー感はしっかり出したい。今は自分で焙煎(ばいせん)もしていて、いい味を出せるように研究しながら試行錯誤しています」。今ではランチタイムなどで行列のできる人気ぶりだ。
店名の「ALSTER&GARTEN」は、2人がドイツでプレーしていた頃に住んでいたハンブルクのアルスター湖が由来。「ハンブルクは湖を中心に街が栄えていて、湖の周りにカフェや公園があり、人が集まる。僕たちもコーヒーを通じて、アルスター湖のような場所を神戸に作りたいという思いから名付けた」と、人々が集う憩いの場にしたいとの願いを込めている。
サッカーファンだけでなく、年齢を問わず地元の人々やコーヒー好きが訪れる。ソファやテーブルなど、おしゃれで落ち着きがあるインテリアは、2人で家具店を回り買い集めたものだ。「やりたかった店のコンセプトに近づいている。いろんな人が来られる場所、コーヒーがおいしい場所。今後はワークショップなどいろんなことにチャレンジしたい」と、コーヒーを足がかりにした可能性を探っている。(デイリースポーツ・中野裕美子)
◆酒井高聖(さかい・ごうそん)1996年3月20日生まれ、28歳。新潟県三条市出身。小5からサッカーを始める。高校から新潟のユースでプレー。DF。14年に新潟トップチーム昇格。16年に福島へ1年間期限付き移籍後、18年にドイツ・リューネブルクSKハンザ、19年にVfRアーレン、21年FVイラーティッセン、22年6月に引退し、神戸市東灘区でカフェ「ALSTER&GARTEN」をオープン。