【野球】阪神 掛布雅之氏の異例の提案は熱狂的な甲子園球場の雰囲気を変えるか「声援は感じても音を感じることはない」ファンの意見はさまざま
ミスタータイガースならではのアイデアだったように思う。阪神の掛布雅之OB会長(69)が、21日に大阪市内で行われた「甲子園歴史館運営会議」の理事会・定例報告会に粟井球団社長らと出席。甲子園球場で鳴り物応援をなくした状態での試合開催プランを訴えた。
「やっぱり90周年ということで、4万数千人が入る甲子園球場で打球音が聞こえるような。その雰囲気の中で野球やったことって、今の選手ってないと思うんだよな。それをファンの方達が演出したらすごくいい野球が見られるんじゃないかと。オールドファンが喜ぶんじゃないかということは、ちょっと言わせていただきました」
日本では昭和の時代から鳴り物応援が定着。掛布氏の時代にはバース、岡田のヒッティングマーチがファンの間で親しまれ、2023年に岡田監督の下、1985年以来、38年ぶりの日本一に輝いた際には指揮官の現役時代のヒッティングマーチも奏でられた。
トランペット音に合わせて、大声を出す観戦スタイル。それはファンのストレス発散にもつながり、スタジアムの熱狂を呼び起こす一因にもなる。令和の時代となった今でもそのスタイルは継続されている。一方で掛布氏にとってある忘れられない出来事があるという。
「長嶋さんが監督の時に、東京ドームで球音を楽しむ日があったんですよ」と明かした掛布氏。「バットとボールが当たる音とか、ピッチャーが投げたボールがキャッチャーミットに入るバーンって音だとか。野球には音があるんだと。今、声援は感じても音を感じることはないでしょ。だからファンの声援じゃなく、選手が音をファンに聞かせてあげるみたいな。そういうゲームがあってもいいんじゃないですかと」と球団サイドに訴えたという。
「佐藤輝がホームランを打った音とかさ。子どもたちもこんな音がするの?って思うんだよね」と語ったミスタータイガース。コロナ禍では鳴り物応援がなかったものの、観客動員が制限され、満員の歓声を選手が感じることはできなかった。それだけにファンと選手、双方にメリットがあると感じる。
実際にファンは「阪神といえばファンの熱狂的な応援がイメージだけれど、選手あっての野球だから、たまにはこういう試合も選手ものびのび野球できそうと思う」「無音試合はこれまでにもあったが、最高に楽しかった」「月1試合でいいからやってほしい!!やってくれたら甲子園行く」「いいね!コロナの時に聞いたホームランを打った時の音が忘れられないもん」と好印象を抱く一方、「おとなしくしていられない」「鳴り物応援は日本野球文化の一つだし、球団ごとに個性あって面白い」といった意見もあった。
粟井球団社長は「そのアイデアを生かして形にはしてみたいなと。今年間に合わなくても、来年でもいいじゃないですか」と前向きに検討する姿勢を示した。現役時代から何よりもファンを大切にしてきた掛布氏。常にファンの視線をエネルギーに変えて実績を積んできた。早期の現役引退も「4番を打つことができなくなったから」とファンの期待に応えられないことで、潔く自らユニホームを脱ぐ決断をした。
2軍監督時代にはウエスタンの試合終了後に選手のマイクパフォーマンスを導入するなど、どうすればファンが喜ぶかを常に考えていた掛布氏。もし鳴り物がない中で、純粋に野球の音と過去に記者席で経験してきたスタンドが揺れるような大歓声が経験できるとすれば-。そんな甲子園球場の雰囲気を感じてみたい。そう思わせるようなミスタータイガースの提案だったように思う。(デイリースポーツ・重松健三)