【野球】DeNA南場オーナーが愛される理由「あの人はほんっとに野球が好き、ベイスターズが好き」元GM高田繁氏が明かす熱量
26年ぶりの日本一を達成したDeNAの元GMである高田繁さん(79)は、現在DeNA本社のフェローとして南場智子オーナーら経営陣のアドバイザー的役割を担う。南場氏が日本球界初の女性オーナーに就任して10年。悲願達成の瞬間をともに見届けた高田さんが、オーナーのあふれるチーム愛、勝利への熱量の高さを明かした。
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連敗からの破竹の4連勝で日本一を決めた11月3日。歓喜に包まれた横浜スタジアムのグラウンドでは、チャンピオンフラッグを携えての選手、監督、コーチ、関係者らによる場内一周が行われていた。
期せずして行列に加わることになった高田さんは、26年ぶりの優勝に沸く球場の光景を目に焼き付けた。視線の先には、ファンで埋め尽くされたスタンドに向かって足を止め、ていねいに頭を下げ、手を振る南場オーナーの姿があった。
2018年にGM職を辞して以降、高田さんは現場とは一線を画してきた。本社のフェローの任を受け、シーズン中に月に1度はハマスタでオーナーとともに試合を観戦するが、グラウンドは素通りしてきた。
「球場の2階の部屋へ行って、オーナーと試合を見ていろんな話をする。終わったら帰る。もう、立場が違うから」
監督や選手らとの接触は避け、球場から直帰するのが常だった。
そんな高田さんがグラウンドに出たのは、一緒に日本一を見届けたオーナーから「高田さん、場内一周しましょう」と声をかけられたからだった。最初は「勘弁してください、僕はもう関係ないから」と固辞したが、オーナーの気持ちに心を動かされたという。
「オーナーは『私がやりましたよ』って言いたいわけじゃない。ファンの人にお礼が言いたい、みんなに、ありがとうって伝えたかった。そう言われたら、俺も『分かりました、行きましょう』ってなる。ファンを大事にしてるし、球団を大切に思ってる。ああして、頭を下げてね。ファンの人に気持ちは伝わるからね」
日本シリーズはもちろんのこと、シリーズ出場をかけての阪神とのCSファーストステージ、巨人とのファイナルステージ全試合を、オーナーは現地観戦してきた。その行動力に舌を巻きつつ「あの人は、ほんとに野球が好きで、ベイスターズが好きで。勝ちたいのよ。勝つために、ほんとに一生懸命」と感じ入る。
「むちゃくちゃなお金を出して、何でもいいから選手を獲れ、強くしてって感じではない。だけど、最大限のこと、『優勝するには必要です』って言ったらゴーサインを出す。筒香にしても、宮崎にしてもそう」
昨季途中からチームに復帰した筒香嘉智、FA権を行使せず異例の6年契約を結んだ宮崎敏郎の名前を挙げた。
チームに、ファンに寄り添う、愛あふれるオーナーの姿に、高田さんの脳裏によみがえったのは、自身が日本ハム監督を務めていた当時(85~88年)の大社義規オーナーだったという。
「あの人もそうだった。本当に野球が好きでね。監督をしていた当時、弱くて、負けてばっかりだったんだけど、大社オーナーに一度も強い言葉をかけられたことはなかった。現場、監督、コーチや選手に『頑張ってくれよ、元気出してくれよ』って。南場さんも同じ」
球界の名物オーナーとなった南場オーナーに、大社オーナーの面影を重ね懐かしんでいた。
(デイリースポーツ・若林みどり)
高田 繁(たかだ・しげる)1945年7月24日生まれ、79歳。大阪府出身。右投げ右打ち。外野手、三塁手。浪商高から明大に進み、67年に巨人からドラフト1位で指名され入団。1年目からレギュラーとして活躍し、68年は新人王と日本シリーズMVPに選ばれた。堅守、巧打、俊足でV9に貢献、71年には盗塁王を獲得した。76年には三塁手にコンバートされた。80年に現役を引退し、85年から日本ハムの監督を務めた。退任後は巨人のヘッドコーチなどを歴任、05年に日本ハムのGMに就任。08年からヤクルト監督、11年からはDeNAの初代GMを務めた。