【野球】日本ハム・新庄監督 キャンプで見えた新庄野球の根底 就任4年目、浸透してきた哲学
就任4年目を迎えた日本ハム・新庄剛志監督(53)。シーズン中は大胆な作戦や選手起用が目立つ印象が強い。ただ、キャンプ中の行動や発言を振り返ると、地道な確認を徹底する姿勢は一貫している。チームの成長を促す新庄野球の根底には、何よりも準備を大事にするフィロソフィーがある。
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16日に行われた練習試合・楽天戦(名護)。試合開始の3時間半以上前、新庄監督の姿は雨上がりのグラウンドにあった。ぬかるみの場所に近寄って状態を確認。整備をするスタッフとも、身ぶりを交えて会話を交わしていた。指揮官自らグラウンドコンディションを確認することはあるが、新庄監督は15分以上も入念に時間をかけていた。
「俺、準備を大切にする人間だから。何に対しても」。打撃に定評がある山崎福也投手のDH起用プランを4日に披露した際、信条を口にしていた。山崎には今キャンプ、1クールに1度は野手に混じって打撃練習をさせている。シーズンでやって来る“その時”のために備えてのことだ。
実戦中の一コマにも、準備を重視する姿勢がうかがえる。2死から外野フライを捕球したシチュエーションでは、チェンジになっても、野手が本塁までの送球を続ける。紅白戦だけでなく、対外試合でも相手チームに走者への注意を促してほしいと了承をもらった上で実施。「試合でのああいうボールが一番練習になるから。シートノックと全く違うので。ファンの方も見ているし、恥をかきたくないというところを慣れさせていかないと」と意図を説明した。
18日の練習試合・中日戦(北谷)では、相手の樋口が左翼守備でフェンスに激突して救急搬送。新庄監督は試合前にフェンスのラバーが硬いと確認していたことを明かし、「お金をかけて直さないと」と、球団の枠を超えて施設の改善を訴えた。自軍の選手には危険性を鑑み、深めに守らせていたという。一夜明けた19日にはコーチに指示し、外野手にフェンス際の捕球練習をさせていた。選手も意識が高まるタイミングで、できる備えはすぐにやる。スピード感も速い。
15日の紅白戦で投球時に何度も帽子が脱げた新人右腕の山城には苦言を呈した。落ちた帽子を踏んで足を滑らせたり、帽子に視界をさえぎられて打球が直撃したりする危険性を指摘。就任1年目から言い続けているとし「何かあってからだと遅いから。何かある前に気をつけて」と強調していた。
練習する前に、試合に臨む前に、可能な限りの備えは怠らない。球団関係者は「環境面はすごく大事にする」と話し「一緒にいたら、すごく常識人ですよ」と、世間に広まっている型破りなイメージとは違う指揮官の一面を明かした。
2年連続最下位から、昨季は2位に躍進。経験を積み、自信をつけた選手たちには、新庄監督の哲学が着実に浸透してきた。何に対しても準備を大切に-。この姿勢を貫いているかぎり、今季もさらに強さを増した日本ハムが見られそうだ。(デイリースポーツ・藤田昌央)