【野球】なぜ中日新助っ人に場外弾を浴びた阪神・才木は「良かったんじゃないですか」と発言したのか
「オープン戦、中日6-9阪神」(23日、Agreスタジアム北谷)
推定飛距離は140メートルといったところだろうか。初回2死一、二塁から阪神・才木の内角直球を振り抜いた中日・ボスラーの打球は一直線に伸びて防球ネットを飛び越え、右翼場外へと消えていった。打球方向を見つめていたマウンド上の右腕は口をあんぐりと開け、驚いたような表情を浮かべていたが、登板後には「まあまあ良かったんじゃないですか」と語った。一体、なぜなのだろうか。
昨季チームトップで自己最多の13勝(3敗)を挙げた才木の今年初登板。相手は同一リーグの中日で、アーチを喫したのはメジャー通算10本塁打、マイナー通算162本塁打の実績を持ち、3年連続リーグ最下位に沈むチームを救うキーマンと目される左打ちのボスラー。早くも苦手意識ということにはつながらないのだろうか。
才木は登板後、「あれはいい球ですよ」と失投ではなかったと振り返りながら、種明かしをした。「初めての対戦だったのですが、インコースが好きだと聞いていた」。右腕はボスラーが内角球を得意にしていることを知りながら、あえて懐に飛び込んだというのだ。
「めっちゃ飛んでいったんで。シーズン前に(内角球が)好きだと分かった。まあまあ良かったんじゃないですか」。事前に聞いていた情報だけではなく、実際に打たれたことで改めてボスラーの得意ゾーンを体感することができた。そこに価値を見いだす。
外国人打者への初球ストレートは危険だと、過去のプロ野球の歴史が何度も語っている。それでも今はオープン戦。シーズン本番ではない。変化球を使ってカウントを整えたり、抑えることだってできたはず。だが、抑えたことで相手が研究したり、多くの手の内を見せてしまうことより、あえて餌をまいて相手の特徴を知ることにつなげた場外弾の意味を才木はプラスに捉える。
スタメンマスクをかぶった栄枝は、ボスラーを迎えた三回の第2打席で何度か自軍ベンチに視線を送り、今度は外角主体の配球でビーズリーをリードし、最後は一ゴロに仕留めた。結果は二の次。内を攻めた後は外。新助っ人の対応力を見定めているように映った。
藤川監督は試合後、ボスラーについて「素晴らしいバッターで、パワーがありますね」としたが、あまり多くを語ることはなかった。これがプロの世界というものだ。開幕1軍の当落線上に位置する投手なら別だが、才木のようにある程度の経験と実績を持つ投手ならば、今はいくら相手に打たれたっていい。それと引き換えに貴重なデータを集めることができることの方が、チームにとっては大きな収穫となる。
新監督に就任して覇権奪回を目指す今季。どんな思いでキャンプを過ごし、ペナントレースに向けて、どういった戦い方を繰り広げていくのか。勝ち負けだけじゃない。打った、抑えただけでもない。開幕までまだ1カ月以上を残す時期だけに、こんな試合の楽しみ方があってもいい。(デイリースポーツ・鈴木健一)