【スポーツ】現役引退の丸山城志郎 「打倒・阿部一二三」に燃えた現役時代とは 私生活もすべて柔道に捧げる
柔道男子66キロ級で世界選手権を2度制した丸山城志郎(31)=ミキハウス=が2月に、現役引退をした。現役から退く経緯などを語った引退会見の後に、追加取材を受けた丸山は、数々の名勝負を繰り広げてきた同階級に君臨する最強のライバル・阿部一二三(パーク24)へのいちずな思いや、こぼれ話を明かした。
丸山城志郎という男はどこまでもいちずだった。語る上で欠かせないとのライバル関係。1日24時間で柔道家でなかった時間はなく、常に頭の中にあったのは阿部一二三の倒し方だった。
つかの間の休息で趣味の磯釣りに没頭する時も頭の中にあったのは柔道のこと。妻のクルミさんと話す時も子どもと遊ぶ時も「頭の中はずーっと柔道」。心休まる自宅でさえ「常に試合のことを考えていた。というよりは阿部選手なんですけど、そのことだけをずっと考えていましたね」と思考は一色だった。
20年12月の東京五輪代表決定戦では一二三と延長戦を含め、24分間の死闘を繰り広げた。この“世紀の一戦”をはじめとし、最強のライバルとは何度もぶつかった。一時は丸山が優位だった時期もあり、19年8月の世界選手権準決勝では技ありで直接対決3連勝を決め、自身初の世界選手権制覇を達成した。
ただ、畳の上以外で2人が交流することは一切なかった。相手に弱みを見せないためで「ライバルになる相手と仲良くなる必要はない。むしろ仲良くしたら駄目」。丸山が今でもよく覚えているさ細なエピソードが、一二三との関係性を表しているかもしれない。
19年4月に福岡・博多で行われた全日本選抜体重別選手権。前日計量を終えた後の食事で某うどんチェーン店に足を運んだところ、一二三と鉢合わせた。丸山は「マジか!?こんなに店がある中で一緒になることがあるのか」と驚きつつ、気まずい雰囲気にのまれ、あいさつもできなかったという。「明日はたぶん決勝で当たるな」。偶然の遭遇からわき出た予感は的中。決勝で対決し、同大会を制している。
引退会見を終え、追加取材を受ける丸山の姿は現役時代とは異なっていた。「現役の時は(威圧感を出すために)オラついてないとやれないので」と、常に緊張感を漂わせていたが、今は「ホッとしている」と終始、柔らかい表情だった。妻にも「人間らしくなった」と言われるそうだ。
勝負の世界から身を引いたからこそ、やりたいことが一つ生まれた。「僕自身は狂ったようにトレーニングしてきた。彼は一体どれだけ練習してるんだろうと気になる。聞いてみたい。いずれそういうのもできたら」。阿部一二三という柔道家を知りたいと丸山は望んでいる。(デイリースポーツ・中谷大志)
◆丸山城志郎(まるやま・じょうしろう)1993年8月11日、宮崎市出身。3歳のとき、92年バルセロナ五輪代表だった父・顕志さんの影響で柔道を始める。沖学園高から天理大に進んだ。18年アジア大会銀メダル。世界選手権は19、21年大会で2連覇し、22、23年大会は準優勝。左組みで得意技は内股、袖釣り込み腰。趣味はドライブ、釣り。家族は18年に結婚した妻クルミさんと長男、次男。167センチ
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