【野球】「若いうちに3年後、5年後の自分を考える時間があった方がいい」大学准教授になった元楽天・西谷尚徳さんの願い 現役時代から二刀流で学ぶ

 プロ野球選手だった西谷尚徳さん(42)は、立正大学法学部の准教授として教壇に立っている。楽天、阪神で6年間を過ごし、引退後すぐに教職に就いた。現役時代は故障に苦しみ、早くから第二の人生を意識し準備をしてきたことが、今につながっている。いつかは訪れるユニホームを脱ぐ時に向けて何をすべきか、西谷さんが「想定すること」の大切さを語った。

   ◇   ◇

 「先生」と呼ばれる職業に就いて14年が過ぎた。高校時代の目標をかなえた西谷さんは大学の教壇に立ち、学生に文章表現やフィールドワークなどを指導している。

 「自分が若い子たちに教えるのも楽しいんですけど、お互いが楽しめた時が一番、刺激的ですかね。教えるのが好きだったんですよね、昔から。野球部でも仲間に数学を教えたりしてましたね」

 教師は天職だったのだろうか。「だと思います」。西谷さんはうなずいた。

 野球との二刀流で取得した資格が、第二の人生に生かされている。

 主将も務めた明大時代、野球だけでなく勉強にも打ち込みたいと二部(夜間)を選択。昼は野球、夜は勉強に励み高校の国語教師の免許を取得した。「教師も目指しつつ、野球も頑張りますという感じでした。両方を追いかけて思いっきり頑張っていた」

 楽天に入団してプロ野球選手になって以降は、必要に迫られて将来に向けて備えてきた。

 「ひじのケガの巧妙と言いますか、今の自分じゃなくて、将来的な自分を考える、考えさせられる時間が長かったんです。3年目を手術で棒に振りましたから。1年リハビリをしましたが、計画が立てられていて、早い時だったら1時間半で終わるんです。頑張っても半日。それ以上できないんです」

 リハビリ後の空いた時間を学びに使い、2009年からは、指導者の道を進もうと明星大大学院の通信制で教育学を学び始めた。トライアウトを経て阪神に移籍した2010年も二刀流を継続。2度目の戦力外を通告された同年秋に修士論文を提出した。

 「できないですよね、普通は。選手としては終わってるんだけど、こっちはまだ始まってもないから、やらないといけなかったんです」

 長い時間をかけて準備を進めてきた結果、引退翌年の2011年春から、高校の国語講師など複数の職を得ることができた。2013年には立正大から専任講師のオファーを受けて、国語の教師の道を究めていくことを決断して、キャリアを重ねていった。

 NPBはプロ野球選手の第二の人生支援のため2007年に「セカンドキャリアサポート事務局」を設立したが、当時は現役選手が、その後の人生について考えることへの理解は広がっていなかった。

 「不安があっても他のことをやることが許される時代じゃなかった。だから、今のように選手たちが、セカンドキャリアを考えなきゃいけないとうのが一般論的になってきたのはありがたい」

 そう実感を込める。現役時代、遠征のバス移動の際にパソコンを広げたり、本を読んだりする西谷さんに周囲は冷ややかだった。手術、リハビリを経て復帰して以降は人目を避け、移動中は睡眠時間を稼ぎ、夜に勉強する日々を過ごした。

 時代は少しずつ変化している。西谷さんは自身の経験を生かし、2018年以降、複数回にわたって日本ハムに招かれファーム育成選手研修で講師を務めている。「選手たちの考え方の幅や野球に対する見方を広げたりするきっかけを与えに行ってる感覚です。経済的なこと、お金のことだったり、いろんな視点でお話しする。引っかかるかは分からないですけど」

 元プロ野球選手の潜在能力を信じている。

 「元選手や元気な若者をほしがってる企業さんや業界があるというのを選手に教えてあげられたらいいと思いますよね。勝手な推測ですけど、選手のバイタリティーとか、昔でいう根性的な突き進む力とか、できない人はいっぱいいますから。毎日グラウンドに出て、大声を出して、毎日動いてというのは、働き方として大切なメリットですからね」

 6年間のプロ野球人生を経て、教師としての人生を送る西谷さんは「想定する」ことの大切さを説く。

 「若いうちに、一週間に1分でも10分でも、3年後、5年後の自分を考える時間があった方がいい。選手だったら考えときなさい、それが正直な気持ちです」

 プロ野球選手を一生続けることはできない。若くしてユニホームを脱ぐことになった時、何をしていくのか-。元選手として、現役の教師として切に訴えた。

(デイリースポーツ・若林みどり)

 西谷尚徳(にしたに・ひさのり)1982年5月6日生まれ。埼玉県出身。明大文学部卒。明星大大学院修士課程修了。2004年のドラフト4巡目で楽天入り、09年に退団。トライアウトを経て2010年に阪神と育成契約を結び、オフに引退した。翌年から高校の国語講師などを務め、13年から立正大学法学部の専任講師に。18年から准教授を務める。専門は教育学。

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