大社が“甲子園の魔物”に勝った!痛恨の後逸からの逆転劇で新たな歴史の扉を開いた!
魔物に勝った。第106回全国高校野球選手権で、タイブレークの末に早実にサヨナラ勝ちし、創部初の夏3勝目を挙げた大社だ。
17日の3回戦。1ー1で迎えた七回無死、早実・内囿の中前への打球を大社の中堅手・藤原が後逸し、痛恨の勝ち越しを許した。
センターのフェンス近くまで転がる打球を追いかける背番号8。私はレンズを向けながら、一番恐れていたことが起きてしまったと思った。1回戦から母校の試合を撮影しながら、とにかく最後の最後まで悔いのないプレーをしてほしいと願っていた。
昔から、“魔物”がいると言われる甲子園。堅守の大社が“まさか”の後逸で勝ち越しを許した。試合に負けたら、悔いが残るエラーとなるだろう。ファインダー越しにそう思いながら、重いシャッターを切った。
しかし、ここからが逆転劇の始まりだった。リードオフマンとして島根大会からチームを引っ張った藤原は、決して下を向かなかった。エースの馬庭が気迫の投球で追加点を許さず七回を投げ終えると、自らを鼓舞するかのように、ベンチへ元気よく走って帰った。
八、九回と馬庭が無失点に抑え、再び試合の流れをたぐり寄せた。最終回の攻撃はその馬庭から。二塁へのゴロとなったが、全力疾走。アウトかと思った瞬間、悲鳴と歓声が響き渡った。まさかの悪送球でファウルグラウンドへボールが転がる間に、馬庭は二塁へ。ベース上で何度も何度もガッツポーズを決めナインを鼓舞した。
8番の園山が内野安打でつなぎ、9番の高橋が見事に三塁線にスクイズバントを決めて、土壇場で同点に追いついた。レフトのアルプス席から割れんばかりの歓声と拍手が響き渡る。
タイブレークの延長に入ってからも、馬庭の踏ん張りと堅い守備で早実に得点を許さない。シャッターを切りながら、胸の鼓動が聞こえるようだった。
迎えた十一回裏の攻撃。代打・安松の絶妙なバントが内野安打となり無死満塁。再び打席に立った馬庭がセンターへ抜ける劇的なサヨナラヒット。張り裂けそうな胸の鼓動を感じながらシャッターを切った。
母校が早実に勝ったことよりも、“甲子園の魔物”に勝ったことがうれしかった。監督、ナイン、アルプスの応援団が一丸となって新たな歴史の扉を開いた。93年ぶりの準々決勝も、最後の最後まで悔いのないプレーができることを祈っている。(デイリースポーツ・開出牧)