「先生、胸にしこりがあるねん」…乳がんは「男性」でも発症します

 「先生、胸にしこりがあるねん」。確かに左の乳首にしこりを認め、痛みもあるようです。肝臓が悪かったり、ある種の利尿剤、潰瘍の薬、抗精神病薬を飲んでいると女性化乳房といって男性でも乳首にしこりができることはよくあります。

 また、子供でも時々、ホルモンバランスの関係で乳首に痛みを伴うしこりができることがあります。私も小学生の時にできました。その他にも精巣腫瘍、甲状腺機能亢進(こうしん)症、慢性腎不全などでも起こりえます。

 この方は、肝臓疾患もなく、該当する内服もされていません。しこりは小さいのですが、硬くてイビツで、しっかりと触れることができます。嫌な予感がします。即、エコーを施行。癌(がん)を疑う所見です。近くの乳腺専門医に紹介しました。診断は乳がんでした。女性だけでの病気ではありません。私は医師になりたての時に1人、この患者さんで2人目です。紹介した乳腺専門医の先生は初めてのようでした。

 約1%の割合で男性に認めると言われていますが、実際に遭遇するのは乳腺の専門医でも稀有(けう)なようです。私は20年以上、乳がん治療に携わっていませんが、町医者をしていると時折、乳がんの患者さんに出会います。

 勤務医時代には、検査技師、病理医の先生の協力で1時間という短時間で確定診断に至ることもありました。話はそれましたが、男性乳がんは71歳に発症ピークがあり、エストロゲンという女性ホルモンが高値である期間が長いほどリスク高いようです。停留精巣、肝硬変などです。

 女性は40代から60代に好発します。乳がん検診や、自己検診などで発見されることがありますが、男性は乳がん検診、自己検診もしませんので、比較的進行した状態で発見されることが多いようです。そのために予後が悪い傾向にあるようですが、がんの悪性度としては女性と変わりがないようです。

◆谷光 利昭 兵庫県伊丹市・たにみつ内科院長。外科医時代を経て、06年に同医院開院。診察は内科、外科、胃腸科、肛門科など。

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