子どもを助けようとして親が溺れる…そんな悲劇を防ごう

 溺(おぼ)れる子どもを助けようとして、水に飛び込んだ親御さんが犠牲になっています。以前は親子で亡くなる事故が多かったのですが、最近は子どもは助かり、大人が亡くなる事故ばかりです。子どもは学校で「浮いて待て」と習っており、浮いて救助を待つ方法を知っています。でも飛び込んだ親は「助けなきゃ」と思うあまり、泳ごうと頑張ってしまいます。

 万が一、飛び込んでしまったら、「助ける」より「子どものそばに寄り添う」と考えてください。子どもがゴムボートにしがみついて風に流されている場合は、泳いで近づこうとしても絶対に無理です。子どもがバランスを崩して落水するかもしれません。決して飛び込んだりせず、でも通報をためらっている場合ではありません。海上保安庁「118番」か、消防「119番」に電話して救助を待ちます。

 陸にいる人たちは、飛び込んだ親子を助けようと手を差し伸べてくれますが、子どもを抱え上げるために、親は息を吐いて潜水し、子どもの腰あたりをもって水面に持ち上げようと頑張ります。ただ、頑張れるのはせいぜい30秒。子どもが引き上げられた時には、親は海底に沈んでいくことになります。

 水面と陸の高低差で這(は)い上がれるのは10センチが限度です。それ以上の高さがあったら、親子で浮いて救助を待ってください。陸の上の人はためらわずに救助を呼んでください。水難救助隊の任務は要救助者を上陸させることです。プロフェッショナルでなければできない任務が上陸支援です。

 「すぐ目の前で浮いているだけで、119番通報はちょっと…」と、ためらうヒマはありません。楽しい夏の思い出を悲しみに変えないように、無謀な行動は控えて、プロに救助を要請してください。

◆松本 浩彦 芦屋市・松本クリニック院長。内科・外科をはじめ「ホーム・ドクター」家庭の総合医を実践している。同志社大学客員教授、日本臍帯プラセンタ学会会長。

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