確実に進歩を遂げた「医療」…しかし医師、看護師のレベルはどうだろうか

 私が医師になって30年近くの年月が経ちました。医療は確実に進歩し、研修医だった頃なら、開腹手術をしていた胃癌(がん)や大腸癌は内視鏡手術や腹腔鏡、ロボット手術などで治癒が可能となりました。かつては、お手上げだった末期の進行癌も化学療法、放射線療法などで治癒しています。

 喘息も死亡が劇的に減少し、重篤な感染症なども抗生剤、ECMOなどで救命ができています。町医者も同様です。今まではしなかった内視鏡検査、日帰り手術、抗がん剤投与などが普通にされるようになっています。

 しかしながら、以前勤務していた小さな病院では、下部消化管内視鏡の施行は珍しかったようで、下部消化管の検査をするときは大腸が破れた時のために、常に緊急手術の準備を、という話をしていたようです。もちろん、緊急手術の必要はなく合併症が起きたことはありません。同じ時代であっても病院規模、経験により認識の差はあるのです。

 話を戻して、高い医療技術に携わる医師、看護師のレベルは高まっているでしょうか?偏差値エリートの集団である医師に足りないもの、また、理念ばかりを紙面で勉強している看護師に足りないものはないのか?改めて自問自答する時期が来ていると思います。

 少し前に義母が終末期に入院していた病院では、看護師はノックもせず入室、誤嚥(ごえん)しそうになっている義母に無理矢理食事を詰め込む、最後は悪態をついて退室するなどの態度を取る人を複数見かけました。開いた口が塞がりませんでした。師長に抗議はしましたが、コロナ禍である現在はそれらの確認もできません。

 医療に携わる人間は、医師、看護師という職業に対して改めて考え直し、患者さん、ご家族に安心を与えられる人間にならなければならないと、自省を促す出来事でした。

◆谷光 利昭 兵庫県伊丹市・たにみつ内科院長。外科医時代を経て、06年に同医院開院。診察は内科、外科、胃腸科、肛門科など。

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