認め合おう-人はその存在自体に価値がある 現役医師が感銘を受けた「ヒントになる言葉」
「あなたが死にたいのは、死ぬほど頑張って生きているから」という本が目に飛び込んできました。帯には「何かが足りないんじゃない。みつけてないだけ」との言葉も。これはヒントになる言葉です。多くの患者さんを「死の淵」から救い出した高名な精神科の先生が書かれています。
非常に読みやすい本です。もう駄目だ、と思っている人にぜひ読んで頂きたい一冊です。「何不自由なく生きているお前に、私の苦しみの何が分かる?」という声もあるでしょう。確かに貴方がどれだけ辛く、悲しみのどん底にいるかは他人には分かりません。
言葉の性質上、他人に「苦しみ」「悲しみ」を正確に伝えることは不可能なのです。言葉の性質に関しては、今回、話はしませんが、基本的に同じ価値観、感覚を持った者同士でしか感情の共有はできないはずですから。
この本を読んで凄いなと思った言葉は「世界に絶対的な正しさは一つも存在しない。あると思っているならそれは錯覚をみているだけ」です。他にも「正義は状況によってひっくり返る」など、世の中を達観して見ておられるような言葉を多数見受けられます。
多くの問題は「個人」の「正義」を押し通すことで起こっているように思います。人によって個性、能力は違う、国によって、家族の定義も違う。違うことだらけです。
例えば、私に素晴らしい歌を歌って人々の心を癒しなさいと言われても無理です。ジョン・レノンに日本のサラリーマンの仕事ができたでしょうか?一夫一婦制の国もあれば、一夫多妻制、一妻多夫制の国もあります。場所が変われば常識も変わります。
人にはそれぞれ違いがあり、優劣はありません。その違いをお互いに認めることが大切ではないでしょうか。人はその存在自体に価値があるのです。
◆谷光利昭(たにみつ・としあき)兵庫県伊丹市・たにみつ内科院長。デイリースポーツHPで「町医者の独り言」を連載中。