天高く馬肥ゆる秋 「馬肥ゆる」の語源は中国への略奪騎馬民族 医師がことわざを解説

 「天高く馬肥ゆる秋」という諺の「天高く」とは、空気が澄んで高く晴れわたる秋の空を表しています。秋の空が高く見えるのにはいくつか理由があります。まず、秋は空気が澄んでいるという点が挙げられます。夏の空気は水蒸気を多く含み、水蒸気が多いと空は白っぽくみえます。空気中の水分が太陽光を散乱するためです。

 秋の空気は乾燥していて水蒸気が少ないので、太陽光は散乱しにくくなります。そのため、空気の透明度が高くなり、秋の澄んだ空気の下では、空が一段と高くなったように見えるのです。

 さらに夏と秋では、雲の種類が違います。夏の代表的な入道雲は、よく発達していて高く盛り上がっていますが、雲の底は低いところにあります。綿雲のように空の低いところにぽっかりと浮かぶ雲もよく見られます。このように夏の雲は高さが低いため、空が小さく見えます。うろこ雲やいわし雲など、秋の雲は高い位置に美しく並んでいるため、空が広く見えて高く感じるのです。

 さて、「馬肥ゆる」ですが、涼しく快適な秋になると、暑い夏に消耗した体は元気を取り戻し、食欲も増します。馬も人間と同じで食欲の秋。よく草を食べて肥えていくという意味ですが、実は元々は、さわやかな秋を表す言葉ではありませんでした。

 昔、中国では秋になると、北方の騎馬民族が元気になった馬に乗って秋の収穫物を略奪にやってくることが多かったのです。襲来する騎馬民族に対して防備すべき季節がやってきたという意味があったのです。爽やかな秋に、殺伐とした話で申し訳ありません。

 ◆松本浩彦(まつもと・ひろひこ)芦屋市・松本クリニック院長。内科・外科をはじめ「ホーム・ドクター」家庭の総合医を実践している。同志社大学客員教授、日本臍帯プラセンタ学会会長。

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