乳がん100例に1例は男性 がん抑制遺伝子に病的変異があると生じやすい 松本浩彦医師

 歌手のブラザー・コーンさんが乳がんにかかったことを発表され、男も乳がんになるのかと驚いた方も多いようですが、乳がんの100例に1例は男性です。

 10年ほど前、ハリウッド女優のアンジェリーナ・ジョリーさんが、遺伝子検査の結果を受けて両乳腺切除・再建手術に踏み切りました。アンジェリーナさんのもつ「BRCA1・2」遺伝子に変異が見つかったのがその理由です。それもBRCA1遺伝子のDNA塩基配列1万6000文字のうち、たった2文字の欠落だけで、がん抑制遺伝子の働きを失っていました。BRCA1、BRCA2遺伝子のどちらか一方に変異が起こると、がん性の変化が細胞に生じても修復できず、がんの増大を抑えられません。BRCA1遺伝子に変異があると、乳がん・卵巣がんの発症率が非常に高くなります。

 どんながんにも必ず抑制遺伝子があり、BRCA遺伝子もがん抑制遺伝子の一つです。BRCA遺伝子に病的変異がある方は、この遺伝子が生まれつき機能していないため、がんが生じやすい体質になります。国立がんセンターの報告では、がんの発症リスクで言うと、一般的日本人と/BRCA1遺伝子変異/BRCA2遺伝子変異の順に、乳がんで10.6%/46-87%/38-84%、卵巣がんで1.6%/39-63%/16.5-27%、男性乳がんで0.1%/1.2%/8.9%となり、BRCA1・2遺伝子異常は前立腺がんや膵臓がんのリスクも高いことがわかっています。

 BRCA1・2は、遺伝性乳がんの中でも一番の原因遺伝子とされており、この2つの遺伝子に異常がある場合をHBOC(遺伝性乳がん卵巣がん症候群)と呼びます。乳房、卵巣、前立腺、膵臓など、BRCA1・2遺伝子がよく働いている臓器でがんができやすく、日本人では約200~500人に1人がHBOCであるといわれています。

 私たちはほとんどの遺伝子を2つ1組でもっていて、父親から1つ、母親から1つ、受け継いでいます。親のどちらかのBRCA1あるいはBRCA2遺伝子に病的変異がある場合、その変異が子どもに受け継がれる確率は、性別に関わりなく50%です。

 では、どうすればこの検査を受けられるのか。「遺伝性乳がん卵巣がん症候群」でネット検索して、遺伝子診療科のある病院であれば可能です。保険適応の場合とそうでない場合がありますが、6万円から最大20万円で検査を受けられます。ちなみに今回のコラムは、許可をいただいて「滋賀県立総合病院」のサイトを参考にさせていただきました。(https://www.pref.shiga.lg.jp/file/attachment/5197283.pdf)

 ◆松本浩彦(まつもと・ひろひこ)芦屋市・松本クリニック院長。内科・外科をはじめ「ホーム・ドクター」家庭の総合医を実践している。同志社大学客員教授、日本臍帯プラセンタ学会会長。

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