「GLP-1ダイエットはやめて」現役医師が理由解説 糖尿病治療薬の適応外使用は補償もなく危険

 美容領域ではいろいろな薬が「適応外使用」されていますが、近ごろ糖尿病治療薬の「GLP-1」を使ったダイエットの宣伝を多く見かけます。日本ではGLP-1受容体作動薬は2型糖尿病の適応症で承認されていますが、肥満や減量目的での使用については承認されていません。まさに適応外使用ですから、もし何か事故があっても、補償される可能性はまずありません。

 日本で肥満の適応症を取っていないのは、日本の製薬会社が承認申請をしていないからで、承認申請をしないのは日本国内で臨床試験をしていないからです。米国FDAが肥満症を適応症として承認しているGLP-1製剤はありますが、適応はBMI30以上かつ食事療法と運動療法で体重管理を実行している人、と制限されています。

 美容目的でダイエットを希望する方の多くはBMI25~30ですが、この範囲の方のGLP-1ダイエットに関するデータはありませんし、作用から考えてもリスクの方が高いと思います。海外のデータでBMI30以上の方でも、減少する体重は1年に1.5~3キロ程度ですので、減量効果も決して高いと言えません。

 副作用について言うと、約4割の方が服薬後に吐き気を訴え、長期間続きます。それで食欲が落ちて、ダイエットにつながるという見方もできますが、もともと血糖値を下げる薬ですので、低血糖発作の危険性もあり、最悪の場合、命に関わります。内服を中止すると確実にリバウンドします。効果も安全性も裏付けはありません。

 決して夢のダイエット薬ではなく、日本人を対象とした安全性や有効性のデータもなく、安全性情報の共有もできていない。GLP-1ダイエットは非常に危険な状況下で行われているのです。どうか安易に手を出さないようにしてください。

 ◆松本浩彦(まつもと・ひろひこ)芦屋市・松本クリニック院長。内科・外科をはじめ「ホーム・ドクター」家庭の総合医を実践している。同志社大学客員教授、日本臍帯プラセンタ学会会長。

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