飲酒中のチェイサーは二日酔いの症状を軽減しない→科学的に証明→「伝説」を信じる酒呑み医者は今も

 先日テレビのワイドショーを見ていると、今回のコラムと同じ内容が紹介されていました。メディアも皆、タイムリーな話題を探しているのですね。ただ、このコラム原稿、発表は後になりましたが、この話題に目をつけて9月の「お題」として関連情報を集め始めたのは私の方が先ですので、あえて掲載させていただきます。

 多量の飲酒の翌朝に起こる、いわゆる「二日酔い」。飲酒家の皆さんは一度ならず経験していると思います。大酒の翌朝、頭痛や倦怠感などの身体症状のみならず、身体の動きや脳の判断力に悪影響を及ぼしたことがあるはずです。

 バーでウイスキーやブランデーなど、アルコール度数の高い蒸留酒をストレートやオンザロックで飲む時、バーテンダーさんはコップ一杯の常温の水を一緒に提供してくれます。これを「チェイサー」と呼び、英語で「追いかける」、つまり強いお酒を飲んだ後を追うように飲めば二日酔いになりにくい、という因習的なサービスなんですね。

 では実際に効果はあるのか。大分大学の研究グループが、チェイサーが体内のエタノールおよびアセトアルデヒドの動態に影響を与えるかどうか、翌日の精神運動機能や自覚症状を測定して、二日酔いの症状が軽減するかどうかを検討しました。その結果、チェイサーはエタノールの体内動態や薬学的指標に変化を生じず、二日酔いの症状にも影響を及ぼさないことが明らかとなり、論文としても報告されました。

 実験では、まず健康で、遺伝子検査でアルコール分解酵素を正常に有することが明らかな日本人男性を13名選び、これを2群に別けて、決められた量の飲酒中に、チェイサーを飲んだ群と、飲まなかった群を比較しました。

 1.呼気中エタノールおよびアセトアルデヒドの動態において、両群間に差は認められなかった。

 2.呼気中のエタノールおよびアセトアルデヒド濃度を測定する数字記号置換検査(DSST)スコアも両群間で同様だった。

 3.主観的な酔いの症状スコア(VAS)を用いて顔面紅潮、頭痛、悪心、集中力、眠気、気分の高揚といった自覚症状を評価したところ、いずれの項目においても両群間に差は認められなかった。つまり「チェイサー」は二日酔い予防に効果がないということが、科学的に証明されたのです。

 しかし、いまだに多くの酒呑み医者は、飲酒時に大量の水を飲みます。二日酔い防止に一番有効だと、医者の間で昔から伝えられている「伝説」のようなものです。かく言う私もその一人。その分、夜中に排尿する回数は増えますが、大量の水が就寝中にアルコールを体外に誘導してくれると信じています。科学的実験と、酒呑み医者が何年も前から続けている「裏ワザ」。軍牌はどちらに上がるのでしょう?

 ◆松本浩彦(まつもと・ひろひこ)芦屋市・松本クリニック院長。内科・外科をはじめ「ホーム・ドクター」家庭の総合医を実践している。同志社大学客員教授、日本臍帯プラセンタ学会会長。

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