なぜJ1神戸は2連覇できたのか 試行錯誤してきた“バルサ化”補強と育成 永井SDが語る連覇
「明治安田J1、神戸3-0湘南」(8日、ノエビアスタジアム神戸)
神戸が3-0で湘南に快勝し、勝ち点72で2連覇を果たした。リーグ連覇は2020、21年に達成した川崎以来で6クラブ目。前半にFW宮代大聖(24)、MF武藤嘉紀(32)が得点して主導権を握り、最終節まで3チームに優勝の可能性があった混戦を制した。11月に天皇杯全日本選手権を制した神戸は、同一シーズンで複数の主要タイトル獲得も初めて。
かつてリーグで2桁台の順位が定位置だった神戸は、なぜ2連覇できたのか。クラブが長年、試行錯誤してきた補強と育成が実を結んだと言える。
昨年と今年はビッグネーム補強をしていないが、近年ではイニエスタ(2018年入団)やサンペール(19年入団)ら、スペイン1部・バルセロナでプレーした名選手を獲得。“バルサ化”と話題を呼んだ。永井秀樹スポーツダイレクター(SD)は「神戸の取り組みとして、Jリーグ全体を引き上げたい思いがあった」と当時の狙いを説明する。彼らの加入は日本人選手の技術や意識改革に影響を及ぼし、チームだけでなくJリーグの知名度アップや集客にも成功した。
クラブは並行して、日本代表やヨーロッパで海外経験を積んだ選手を獲得。19年の天皇杯優勝時も在籍していた山口と酒井、21年に加入した大迫と武藤は、世界レベルのプレーと考え方を根付かせた。練習でも試合でも一切、手を抜かず全力で走り、物足りないプレーや考え方に対しては妥協なく指摘。“生きた教科書”といえる存在が底上げに大きく貢献した。
吉田監督の掲げるハードワークを柱にした「競争と共存」のサッカーも定着。同監督からは今シーズンに臨むにあたり「各ポジションに実力の競り合う選手を2人以上そろえてほしい」と要望があった。ルヴァン杯、天皇杯、アジア・チャンピオンズリーグ・エリート(ACLE)が重なる強行日程を見据え、実力の張り合った2チーム分の戦力を整え、それがチーム内競争を生んだ。
FW宮代、MF井手口、DF広瀬ら移籍選手はチームの戦術を捉え、献身的な働きをした。永井SDは「補強ポイントで一番考えたのは、どのチームも大迫対策をしてくるだろうということ。FWの補強はすごく考えた」と、昨年得点王に輝いた大迫がマークされた場合の対策を最優先。そこで獲得したのが、川崎で昨季チーム最多シュート数を誇った宮代だった。新加入選手がフィットし始めた夏場以降、他クラブが補強をする中で神戸はMF森岡の復帰だけ。「競争が行われてレベルアップしている状況で、補強して逆にバランスが壊れることもある。目立った補強をしないことが最大の補強」と説明した。
永井SDが「種をまき、水をやり、肥料をやってきたことがようやく花咲いたところ」と表現するJ1連覇。まだ完成形ではない。「神戸が取り組んだ“バルサ化”の一番大きなものは、アカデミーの整備や、そこからいい選手をトップチームに上げる取り組みと理解している」と、バルセロナのように育成からトップチームまで一貫した環境作りを目指す。ビッグクラブへの歩みは始まったばかりだ。