神戸・吉田監督 徹底的な分析&自分にも選手にも妥協なき起用貫いた 黄金期へ「まだまだリーグを引っ張って行きたい」
「明治安田J1、神戸3-0湘南」(8日、ノエビアスタジアム神戸)
神戸の吉田孝行監督(47)は2022年途中の就任後、J1で2連覇、今季は天皇杯との2冠を達成した。神戸を強豪に導いた「競争と共存」の妥協なき監督論と洞察力。また、兵庫県川西市出身の監督として、来年1月17日に阪神・淡路大震災から30年を迎える地元に大きな希望をもたらした。
試合終了のホイッスルが響くと、吉田監督はスタッフや控え選手にもみくちゃにされた。そして戦いを終えた選手一人一人を抱き、たたえた。
初優勝を遂げた昨季。オフを楽しむ暇もなく、新たなパズルを組み立て始めた。課題や他チームのマークを想定。幾通りもの可能性を考え、壮大な作品を組み上げた。欠けてもいいピースなど1枚もない。その作品は過密日程を控えた今季、大胆な抜てきやターンオーバーを成功に導いた。
クラブに頼んだのは「1ポジションに実力が競り合う選手を2人以上」というものだった。趣味の釣りも、数回行った程度。選手をリスペクトするからこそ、分析に一切手を抜かない。「これでもかというくらい、パターンを考える。そこまで考えないと誰をスタートに、誰をベンチにすると決めるのは失礼」と仕事に没頭した。
揺るぎない監督論がある。「グラウンドで選手にうそは絶対つかないこと」と「自らの基準」。元日本代表の主力でも万全のコンディションで戦えないと判断すれば臆せず下げた。自分にも相手にも妥協しない方針は昨年、世界的スターのMFイニエスタを構想から外した時の決断と変わらない。トップにあるべきブレない姿勢を貫いた。
1995年の阪神・淡路大震災の1・17に始動したクラブが、震災から30年を前に打ち立てた金字塔も、地元を照らしている。「未来に向けて、神戸から世界で戦うような…。サッカーだけでなく、兵庫県から海外で活躍する人材が出れば」と、クラブが兵庫県全体のリーダーになるという立場を自認する。
黄金期ともいえる2連覇&2冠。「去年の優勝で、Jリーグを変えてやると思っていた。今季は自分たちのような強度の高い、奪ってから速いチームも増えた。まだまだリーグを引っ張って行きたい」と将来を見据えた。
◆吉田孝行(よしだ・たかゆき)1977年3月14日、兵庫県川西市出身。滝川二高のとき、U-17世界選手権に中田英寿、宮本恒靖らとともに出場した。95年に横浜Fに入団し、合併に伴い横浜M移籍。2008年に神戸に移籍し、13年に引退した。17、19、22年とシーズン途中から神戸監督に3度就任。21年はJ2長崎を指揮した。家族は夫人と長女。