「動物園のにおいが気になる」利用者の苦情に園長が回答 においは動物たちのプロフィールです

動物園には、利用者から時々「園内のにおいをなんとかしてほしい」という声が寄せられることがあるそうです。入園ゲートに意見箱を設置している鹿児島市平川動物公園にも、「結構な頻度」でこのような要望が届くのだとか。園長の福守朗さんは「動物にとって、体臭などのにおいは意味のあるプロフィール。においも含めて動物のことを知ってもらいたい」との願いを込め、動物のにおいについてブログに綴りました。

「においに対する意見箱の苦情って、実は割と多いんです。子供が書いたような他愛ないものもあれば、中には『いかがなものか』と真剣に怒っている様子の大人の方も。人間の感覚で動物を見ている人が少なくないんだなと感じます」と福守さんは話します。

動物園には確かに独特の「におい」があります。でもそれは、不潔な環境で飼育しているからではなく、清潔にしていてもある程度は残る動物の体臭や、排泄物のにおいなのです。

「私たちヒトという生き物は話したり読んだり、つまり聴覚や視覚に頼ったコミュニケーションを主にしています。

 一方で、匂いで情報を得たり、伝えたりする生き物も数多くいます。

 イヌを散歩に連れ出すと、地面に鼻を擦りつけるようにして嗅ぎ、電柱などに尿でマーキングするのを見たことがある方は多いのではないでしょうか?

 これは匂いによるコミュニケーションのためなのです。

 匂いによって性別、年齢、繁殖適期であるかどうか、などの情報を伝え合っているのです。いわば匂いはプロフィールなのです。」(福守さんのブログより)

動物園の動物たちも、例えばレッサーパンダはお尻を擦りつけるようにしてマーキングしますし、ワオキツネザルは霊長類では珍しくにおいで情報伝達します。シカは繁殖期の秋になると特有のにおいを発するように。また同じ草食獣でもキリンとシマウマの匂いは異なりますし、同じ類人猿でもオランウータンとチンパンジーではやはり違うにおいがするそうです。

「今の時代、テレビや動画配信サイトで動物の姿を気軽に見ることができるようになりました。見たことがあるものは、知っていて、分かったような気持ちになりがちです。

 しかし、見ただけでは伝わらないものもあります。それは匂いです。

 いくら技術が進歩しても、テレビで匂いを伝えることは難しいでしょう。

 ですから、実物を目の前にして嗅覚でも動物たちを感じられるのは、動物園ならではではないでしょうか。匂いも含めて動物たちのことを知ってもらいたいと考えています。」

「動物園では見るだけではなく、『嗅ぐ』楽しみ方もあります。

 臭いがするからイヤ、などと言わず感覚をフルに使い、動物たちの立場に立って理解してもらえたら嬉しいです。」(福守さんのブログより)

昨年4月に園長に就任した福守さん。コロナ禍で営業がままならない中、動物を飼育・展示するだけではなく、情報発信するのも動物園の役割だと考え、月に1回程度、「園長のおはなし」として飼育員らに交じってブログを更新しています。「難しい言葉を使わず、子供にも伝わるように噛み砕いて書くのは大変ですね」と苦笑しますが、今回の「動物園のにおい」についての記事は、大きな反響を呼んだようです。

(まいどなニュース・黒川 裕生)

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