SNSで話題の「寿司ボールペン」 リケジョのママが、娘の不登校をきっかけに一緒に製作

 色とりどりのお寿司や和菓子のミニチュアを見て楽しめるボールペンがSNS上で話題になっている。高槻市にある工房「Studio Humming bird」の井本麻衣子さんが手掛けており、ネタ6貫が入った「寿司ボールペン」(3500円)は累計販売数6000本に迫る勢い。海外でも人気のアイデア商品。すべて手づくりで実は障害者が製作に関わっている。その背景を取材した。

 何だか見ているだけでワクワクする。カラフルなミニチュアの世界をギュッと詰め込んだユニークなボールペン。初めて目にした人からは「小さい中に夢や遊び心が込められている」「かわいい。プレゼントに最適」「字を書くだけじゃなくて、使って楽しそう」と驚きの声が上がった。

 なかでも人気なのは、お寿司ボールペンだ。1パーツは4~8ミリほどの大きさながら感心するほどの精巧さと味わい深さ。定番は大トロ、マグロ赤身、サーモン、えび、いか大葉、いくら軍艦に、小っちゃながりがついたもの。さらにパーツは、あがりを入れると全部で24種類あり、好きなネタ6貫を発注し、自分だけのオリジナル寿司ペンをつくることもできる。

 和菓子シリーズも負けていない。こちらも三色団子や栗まんじゅうのようなものまで24種類あり、じーっと見ていると、なかなかのツヤと風合い。甘党でなくても、お腹がグ~となりそうなほど良くできている。

 「みなさん、不思議と小さいものがお好きですよね。ひとつ、ひとつが手づくりなので大変ですが、そう言っていただけるとうれしいです」

 こう話すのは工房「Studio Humming bird」を運営する井本麻衣子さん。素材や色合いなどを考えて、作品にしているが、どうやらアイデアは尽きないようだ。

 例えば、焼き鮭に梅おにぎり、ひじき煮などを配した和定食。続いて焼き鯖、玉子焼きなどを盛り込んだ鯖定食なんか、色合いは地味だが、クスッと笑える。さらに、将棋の駒や麻雀牌にサイコロをつけたものまであり、好きな人にはたまらない逸品だろう。「王手!」「リーチ!」と思わず、言いたくなること間違いなしだ。

 作品はまだある。マカロン(個人的にはイチ押し)やフルーツ、マリトッツォ、ケーキを並べたものから喫茶店のモーニングセット、焼き菓子セット、パン屋さんシリーズなど。さらに、季節やイベントものとして、ひな祭り、おせち、バレンタインを用意。この9月からはおばけドーナツやクッキーをイメージしたハロウィンもお目見え。この先に向けてはクリスマスバージョンも視野に入れており、中国の春節もオーダーできる。

 また、これらの発展形としてなんと、寿司ネタや三色団子のピアスやネックレス、ネクタイピンも登場。「香港からも問い合わせがきています。想像以上の反響」とのことだったが、確かに三色団子はセンスがいい。

 そんな井本さんがお寿司ボールペンを思いついたのは2年ほど前。シンガポールから帰国後しばらくしてからだという。もともとはリケジョ。遺伝子実験で培った手技で細かい仕事は得意だったが、実は大変な状況下でのスタートだったようだ。

 「元はと言えば娘が不登校となり、一緒にいる時間が増え、趣味で始めたんですよ。そのとき、たまたま空間のあるペンを見つけ、ここにお寿司を詰めたら…と思ったんです。それが売れ始めたことで、娘にとっても社会とのつながりができ、自信になった。自分が作ったものを通して自分の価値に気づいたようで、1年後には学校に通うようになりました」

 一方、スペシャルニーズを持つお子さんもおり、帰国後は環境の変化に戸惑っていたそうだが「作品づくりがいい影響を与えている」とのこと。そんな背景から井本さんは、障害者の雇用や支援にも力を入れ、現在は大阪と福岡の障害者福祉事業所で一部のパーツの製作をお願いしている。

 「手づくりなので同じ寿司ネタでも色が微妙に違っています。製作には時間が掛かりますが、そこがいいところでは」

 様々な思いが込められた個性豊かなボールペンは重さ約15グラム、長さ約14センチ。ポリマークレイ製となっており、華やかな和紙をコーティングしたペンもある。

 今後の課題はやはり販路。日本貿易振興機構(ジェトロ)の協力を得て海外バイヤーとの商談も始まり、アマゾンとも販売契約を結んだ。国内ではノベルティグッズとして認知度を上げて行ければ、と考えている。少し値は張るかもしれないが、共生社会を目指している会社はぜひ、私からもお願いしたい。

 目標は「障害者の特性と健常者の特技を生かしたアーティスト集団」をつくること。さらに、その先には、かつて住んだシンガポールをモデルにしたアトリエ、ギャラリー、カフェが一体となった「アートファカルティー」のような施設をつくることだ。そこでは障害者も健常者も楽しく支え合って豊かな時間を過ごす。小っちゃな世界ではない。そう、スケールはデカいのだ。

(まいどなニュース特約・山本 智行)

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