「俺の稼いだ金だ。勝手に使うな」と夫が言ったら、モラハラ警報!? どのように対処すべきか…夫婦カウンセラーが解説

妻に対し「それは俺の稼いだ金だ」などと言って自由にお金を使わせない夫がいます。こうした言動はモラハラの可能性があります。

例えば、専業主婦の妻に対し「俺の稼いだ金を勝手に使うな」などと言って、自由にお金を使わせなかったり、中には十分な生活費を渡さなかったりする夫もいます。それに対し「お金を稼いでもらっているから」と引け目を感じ、何も言えない妻もいるようです。共働き夫婦の場合でも、収入の少ない妻が、自分の収入の範囲内で生活するよう夫に要求されることがあります。

こうした関係は周りから見ればおかしいと感じるのですが、夫婦双方が疑問に感じることなく、妻だけが我慢を強いられている関係が続くことも珍しくありません。夫が「俺の稼いだ金」と言うときは、どのような心理状態なのか。また、どのように対処するべきなのか、夫婦カウンセラーの立場から解説します。

■「俺の稼いだ金」と言う心理は?

夫が妻に対し「それは俺の稼いだ金で買ったものだ」「俺の稼いだ金を勝手に使うな」などと言うとき、どのような心理なのでしょうか。よくある夫の心理状態を5つ紹介します。

▽自分が稼いだ金は自分で自由にできると思っている

多くの家庭では、夫が仕事をして毎月の生活費を稼いでいます。専業主婦で家計のほとんどを夫の収入に頼っている家庭があれば、共働きで妻が家計の一部を補っている家庭もあるでしょう。毎月の収入を「俺の稼いだ金」と言う夫は、そうした事情にかかわりなく、自分が稼いだ金は自分で自由にできると思っている可能性があります。

仕事では大変な思いをすることもあり、汗水流して稼いだお金を大切に使ってほしいという気持ちも生まれるでしょう。しかし、こうした夫は「自分は一生懸命に働いている」という思いばかりが強く、妻に支えられて働いているという気持ちがありません。このため、自分一人でお金を稼いでいるつもりになっているのです。

▽妻にお金の管理を任せらないと思っている

毎月の収入を「俺が稼いだ金」と呼ぶ夫は、妻の金銭感覚に不安を抱き、妻にはお金の管理を任せておけないと思っているのかもしれません。妻の中には、ついついお金の無駄遣いをしてしまう人もいます。節約志向の強い夫は、そうした妻の行動に不快な気分になることがあるのです。

夫は妻に対し「もっと将来のために貯蓄してほしい」「子供の教育にもっとお金をかけてほしい」と思っているのかもしれません。そうした不満から、つい「俺が稼いだ金を自分勝手に使うな」と言ってしまうことがあります。こうした場合は、互いに家計や将来設計についてよく話し合う必要があります。

▽お金を使うことに不安がある

節約や貯蓄を優先する人の中には、お金を使うことや貯蓄が減っていくことへの不安を抱いている人がいます。こうした不安がある夫は妻にも過剰な節約を求めることがあり、強い不安から「俺の稼いだ金を勝手に使うな」と言うことがあります。

お金を使うことへの不安は、育ってきた家庭環境や借金などお金に関するトラブルが要因となることが多いようです。不安が強いと、物を買うことに罪悪感を覚えてしまうこともあります。不安があまりに強く、日々の生活や夫婦関係にも悪影響を及ぼすときは、夫婦問題に詳しいカウンセラーに相談したり、専門医の診察を受けたりしましょう。

▽妻より強い立場でいたいと思っている

毎月の収入を「俺の稼いだ金だ」と妻に対して、ことさらに言い、自分が妻よりも強い立場にあることを示そうとする夫もいます。こうした夫は、妻から頼りにされることで、自信を持ち自尊心を満足させます。要するに妻に褒められたいのです。

もしかすると夫は、受け取った給料を妻が三つ指をついて受け取り、神棚に供える昔の夫婦関係を夢見ているのかもしれません。確かに家族のために働いている夫に感謝することは大切です。だからといって、それで自分が妻よりも強い立場にあると考えるのは問題です。

▽妻にお金を自由に使わせず精神的に支配しようとしている

モラハラ気質の夫は、妻にお金を自由に使わせず、精神的に支配しようとすることがあります。妻に十分な生活費を渡さないほか、妻に働くことを禁じたり、お金の使い道を全てチェックしようとしたりすることもあり、こうした行為を「経済DV」と言います。

モラハラ夫が経済DVをする理由は、お金への執着ではなく、妻を自分に従わせたい、思うようにコントロールしたいという願望です。このため、妻が節約しても意味がなく、何か理由を付けては「俺の稼いだ金を勝手に使うな」などと妻を精神的に追い詰めます。

■「俺の稼いだ金」と言われたときの対処法は?

毎月の収入や生活費を「俺の稼いだ金」と呼ぶ夫にどのように対抗すればいいのでしょうか。夫に誤った考えを気づかせる方法や、妻のストレスを解消する対処法などを紹介します。

▽生活費について話し合う

自分で稼いだお金はすべて自分が自由に使えると思っている夫とは、家計について一度話し合ってみましょう。夫は1カ月生活するのに、どれくらいの費用がかかっているのか、理解していない可能性があります。

1カ月生活するのに、具体的にいくらかかるのかを知れば、妻がやりくりに苦労していることを理解してくれるかもしれません。ついでに、妻が無報酬で毎日、家事をこなしていることも念押ししておきましょう。そのうえで、将来に向け貯蓄がいくら必要なのか、子供の教育費にいくら必要なのかをよく話し合えば、夫も少しは考えを改めてくれる可能性があります。

▽自分で稼ぐ方法を考える

夫が「俺の稼いだ金は俺が自由にできる」と言うのなら、妻も自分で稼ぐ方法を考えてみましょう。幸い、最近は働きに出なくても、オンラインでお金を稼げる方法があります。手芸などが得意なら、自作の作品を販売するとネットの販売サイトで売れるかもしれませんし、イラストが得意ならイラストを描く仕事を隙間時間を見つけて受注することもできます。

もちろん、パートに出て働くのもいいでしょう。しかし、夫がモラハラ気質の場合、妻が外で働くのを嫌がる傾向があり、中には仕事をさせないように邪魔をするケースもあるので、注意が必要です。いずれにせよ、以前、働いていたときの資格や技術、趣味を生かして稼げる方法がないか、考えてみましょう。

▽家事を放棄してみる

夫が自分一人の力でお金を稼いできていると思っているのなら、家事を一時的に放棄するのも効果的かもしれません。妻が家事や育児をしているから、夫も仕事に専念できているのだということを分かってもらいましょう。

ただ、仕事に支障をきたすほど徹底的に放棄すると、夫も感情的になって夫婦関係が悪化する可能性があるので、ほどほどにしましょう。少しだけ困らせて、本気で怒っているという態度を示すことで、夫も反省してくれれば、妻のストレスも少しは解消するかもしれません。

▽第三者に相談してみる

妻の話し合いにも応じず、妻が不満を示しただけで「俺の稼いだ金の使い道にいちいち文句をつけるな」などと激高するようなら、夫の行動はモラハラや経済DVの可能性があります。そうなると、簡単に言動は改まりません。

モラハラや経済DVのときは、夫婦間で問題を解決するのは難しいため、第三者に間に入ってもらうのが有効です。モラハラ気質の人は、自分より立場が上の人の意見には耳を傾けるので、会社の上司や信頼できる目上の人に相談するといいでしょう。また、自治体や法律事務所の中には相談窓口を開設しているところもあります。

▽別居や離婚を検討する

「俺の稼いだ金を勝手に使うな」などと言う夫に責められ、精神的に疲れてしまったときは、夫と距離を取ることも一つの方法です。そのまま我慢していると、夫の言動がエスカレートしていく可能性があります。別居や離婚も検討しましょう。

自分が稼いだお金は自分のものと考えている夫は、別居や離婚を切り出しても「家を出たら、一切生活費は出さない」「財産分与はしない」などと主張する可能性があります。生活費の要求や離婚時の財産分与は妻の正当な権利です。しっかり権利を主張できるよう、弁護士に相談するといいでしょう。

■「俺の稼いだ金」と言うモラハラ夫と離婚するには?

毎月の生活費を「俺の稼いだ金」と言う夫の言動がモラハラだった場合、妻は離婚できるのでしょうか。夫との離婚を検討する際のポイントや離婚できる可能性について説明します。

▽経済DVなら離婚できる可能性も

基本的に離婚は互いの合意があれば離婚できますが、モラハラ夫が離婚に合意することはほとんどありません。特に十分な生活費を渡さないなど経済DVをする夫は、財産分与や養育費の支払いなどに強く抵抗します。

離婚に相手が合意しなければ「離婚調停」を家庭裁判所に申し立て、調停でも合意できなければ離婚裁判へと進みます。離婚裁判で離婚が認められれば、相手の合意なしに離婚できますが、それには離婚するだけの理由があり、夫婦関係が破綻していると裁判所に認めてもらわなければなりません。

実際の裁判では、モラハラだけで離婚が認められるのは難しいのが実情ですが、十分な生活費を渡さない、妻に自由にお金を使わせない、といった深刻な経済DVがあると離婚が認められる可能性があります。場合によっては慰謝料請求が可能なこともあります。

▽離婚を考えているのなら弁護士に相談

経済DVがあれば、モラハラ夫と離婚できる可能性があるといっても、裁判所は個別の事情によって判断しますから、離婚できるかどうかは一概に言えません。なにより、裁判では証拠によって事実を証明することが肝心です。

自分の場合は離婚できるケースなのか、証拠として何が必要なのか、生活費や慰謝料としていくら請求できるのか、いざ離婚しようとすると分からないことが多く出てきます。確実に離婚するためにも、夫との話し合いや裁判の進め方について弁護士によく相談しましょう。

■「俺の稼いだ金」と言う夫はモラハラや経済DVの可能性も

毎月の生活費を「俺の稼いだ金」と言い、妻に自由に使わせない夫の言動は、モラハラや経済DVの可能性があります。モラハラや経済DVは妻が我慢していると、エスカレートしていく可能性があり、事態は悪化していくばかりです。結婚生活は夫婦が協力して築きあげるもの。妻だけが我慢を強いられているのなら、弁護士など専門家に相談して解決を目指しましょう。

言葉や態度による精神的DVは、「モラハラ」という認識が高まっていますが、生活費をもらえず、パート代や結婚前の貯金を切り崩して毎月の生活費をやりくりしている状態なのに、夫に何も言えずにいる妻も少なくありません。

状況によっては経済的DVに当たる可能性もありますので、現状を”当たり前”と捉えず、まずは市区町村のDV相談窓口や専門家に相談してみることをおすすめします。

◆高草木 陽光(たかくさき・はるみ)夫婦カウンセラー/課題解決型マッチングメディア「リコ活」専門家

これまで9,000人以上のカウンセリングを行い、夫婦問題・家族問題で悩む人を解決に導くお手伝いをする夫婦カウンセラー。美容師、育毛カウンセラーを経て、結婚して専業主婦となるが、夫の束縛や価値観の押し付けに違和感を覚え「結婚生活とは何か」ということを深く考え始める。書籍に「なぜ夫は何もしないのか なぜ妻は理由もなく怒るのか」(左右社)、「心が折れそうな夫のためのモラハラ妻解決BOOK」(左右社)、メディア実績にNHK総合「あさイチ」、フジテレビ「ホンマでっか!?TV」、テレビ朝日「羽鳥慎一 モーニュングショー」、「ABEMA Prime」などがある。

(まいどなニュース/リコ活)

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