「奈良公園でシカの交通事故が多発」スピード出し過ぎ、ひき逃げも…どうしたら防げる?

「奈良公園ではシカの交通事故が多発しています。車にあたったシカの半数が死亡し子ジカも犠牲になっています」

奈良市内の県立奈良公園付近で、シカと車の交通事故が多発していると訴える投稿が、X(旧Twitter)で話題になりました。

投稿したのは、普段から公園を歩きながらシカたちの環境を改善させようと活動をしている川地祥介さん(@ncbutwDsL0UC6np)。川地さんは、奈良の鹿の治療に携わる人から「昨年(2024年)秋は交通事故で運ばれてくるシカの数が多くて治療は目が回るような忙しさだった。特に生まれて数か月しか経っていない子ジカたちがどんどん命を落としていくのを目にするのはつらかった」と聞き、注意喚起の意味も込めて、ポストしたといいます。

「事故件数については、愛護会さんが例年集計されます。ただまだ昨年の事故件数などの集計がされていないかと思いますので、現場での感覚として多発しているということだと思います。先日もYouTubeにバスとの事故に遭って倒れてる雄ジカの様子が流れていました。現場の映像を見たところゆっくり慎重に走っていれば事故になるようなところではありませんでした」(川地さん)

こうした現状を踏まえて、奈良の鹿を交通事故から守りたい人たちが有志で2月にシカと車の交通事故に関するセミナーを開くことになりました。国の天然記念物「奈良のシカ」たちの交通事故の実態や対応策などを川地さんに聞きました。

■シカ保護団体が毎年シカの交通事故件数を公表…実際の数は?

──奈良のシカの交通事故が多発しているとのことですが。

「奈良のシカの交通事故がいつごろから多発しているかについては正確に確認するのは難しいかもしれませんが、参考となるのは『奈良の鹿愛護会』さん(以下、愛護会)が毎年出されている『ストップ!交通事故』のパンフレットです。これによると2011年から2023年の各年における奈良のシカの交通事故件数が記載されています。

ちなみに2023年は事故発生件数は123件で、残念ながらそのうち73頭が亡くなっています。2011年から2023年までの間、交通事故発生件数は106件から193件の間で推移しています。しかし、この数字も愛護会の職員さんが奈良のシカを保護した際に交通事故と判断された数をカウントされているそうですので、実際はもっと多いと考えられます」

──実際はもっと交通事故が多いと考えられるというと。

「シカが車に当たった後、その場を立ち去ってしまうと、交通事故件数にカウントされず、また交通事故に遭ったシカが別の場所で死亡した場合も交通事故によると認定されない限り、交通事故が原因で死亡した数に含まれないそうです」

──交通事故で、シカがけがをした際には?

「奈良のシカは国の天然記念物なので、交通事故で負傷したシカの通報が愛護会さんに入ると、現場へ職員さんが向かいシカを保護します。そして奈良のシカの保護施設『鹿苑(ろくえん)』に交通事故に遭った鹿を連れて帰り、愛護会の獣医師さんが鹿の治療を行います」

■シカと車の交通事故が起きる要因とは

──事故が起きる要因は。

「シカと当たったドライバーさんに現場で聞いた時はシカが左の斜面から急に降りてきたとおっしゃってました。シカの飛び出しが多いとは思いますがシカの交通事故の場合、ひき逃げがほとんどでどのような状況でシカが事故に遭ったかを知ることは難しいようです。ただ死亡する数が多いことから考えると、かなりのスピードの車とぶつかってるのではないかと推定されます。

シカの交通事故が多い時間帯は、早朝や夜間なので、暗くなってドライバーがシカを発見しにくくなる、道路がすいていてドライバーがスピードを出しやすいなどの要因があるように思います」

──今後、事故への対応策が必要ですね。

「はい。行政が行っている対応策として、道路にシカ注意の標識設置や県がシカの交通事故について気を付けるよう県民向けに広報しているようですが、それだけでは奈良公園内のシカの交通事故対策は不十分だと感じています。シカの交通事故が多い道沿いに柵などの障害物が設けられていない場所があることや、県庁前の中央分離帯に芝生が生えていてこれを食べにシカが広い道路を横断し非常に危険です。これを見かねた多くの人が県に対策を要望していますがこれまで改善されていません。場所によってはセンサー付きの警報装置の設置やスピードを出しにくくするバンプ(凸凹)またはトリックアートの路面表示などの対策を考えて頂きたいです」

奈良の鹿を交通事故から守りたい人たちが集まって、2月9日午前10時から1時間、「クレオ大阪中央」(大阪市天王寺区)の3階でシカの交通事故に関するセミナー「奈良の鹿の交通事故を減らしたい!」を行う予定。参加費は500円、予約は不要です。

   ◇  ◇

■ドライバーから見えにくい子ジカの存在にも十分注意を

シカの交通事故については、道路の対策とドライバーの意識次第で事故はなくせると訴える川地さん。車のドライバーへ向けた川地さんのメッセージをご紹介します。

【ドライバーさんへお願い】

奈良公園内やその周辺の道路では大人のシカも子ジカも1日に数回道路を横断します。

鹿の高さは大人のシカで乗用車のドライバーの目線の高さと同じくらいで、子ジカはそれよりも低くドライバーさんからは非常に見えにくいです。対向車の車と車の間から出てきて渡った鹿の後ろに子ジカがついてきているかもしれません。大人のシカとともに子ジカの存在にも十分注意して頂きたいです。また、シカは犬が苦手です。散歩中の犬を怖がって1頭が走り出すと周りのシカもつられて走り出し集団で道路を横断してくることもあります。十分ご注意いただきたいです。

季節ごとでは発情期(秋頃)の雄ジカは行動範囲が広がり雌ジカを追いかけ雌雄ともに道路に飛び出してきます。追いかけられる雌ジカも追いかける雄ジカも猛スピードで道路に飛び出してくるので大変危険です。奈良公園内及びその周辺道路ではいつシカが飛び出してくるか分かりません。シカが飛び出してくることを常に想定し速度を落としゆっくりと慎重に運転してくださるようお願い致します。

(まいどなニュース特約・渡辺 晴子)

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