「合格した?」「志望していた学校には受かりました」曖昧に答えて自己嫌悪 中学受験で親子を襲った“無邪気な質問”…4月からどうすれば?
受験シーズンは、親子ともに緊張とプレッシャーに包まれる時期。そんなデリケートな時に限って、悪気なく心に踏み込んでくる“無神経な言葉”に振り回されることもあります。埼玉県在住のWさん(30代)は、中学受験の時期にそんな場面に何度も遭遇しました。
■偶然知られた中学受験
Wさんが住むのは大規模マンション。同じマンションに住むSさんは、おしゃべり好きな近所の知人です。ある日、塾帰りのエレベーターでSさんと一緒になり、何気ない会話の中で息子がK中学校を受験予定であることが知られてしましました。
「えっ、K中学校を受けるの!?すごいわね!私詳しくないけど、K中は聞いたことあるよ」
Sさんは驚いた表情で食いつき、Wさんも“しまった”と思いながら、「そうなんです。受かるといいんですが…」と苦笑いで返しました。この瞬間、Sさんの中で“Wさんの息子=K中学を受験する家”という認識が確立されてしまったのです。
その日以来、マンションの敷地内やスーパーでSさんと顔を合わせるたびに、決まってこう言われるようになりました。
「受験、頑張ってる?K中学校は最難関なんだもんね!」
「体調管理も大事よ!」
まるで応援団長のようなテンションですが、そのたびにプレッシャーは増すばかり。さらに極めつけは、
「結果はいつわかるの?2月何日かしら?応援してるからね!楽しみね!」
とニコニコ顔で無邪気に言い放つSさん。Wさんは心の中で「まさかカレンダーに書き込んだりしてないよね?」と不安を覚えました。
■最悪のタイミングでの再会
運命の合否発表日。Wさんの息子は第一志望のK中学には不合格となり、親子ともに呆然としていました。そんな中、よりによってSさんと鉢合わせてしまいます。
「今日発表だったよね?ねえねえ、結果どうだった?合格した?」
ズバリ核心を突いてくるSさん。その場には、やっと立ち直りかけていた息子もいます。どうしても「駄目だった」という言葉を口にしたくなかったWさんは、第二希望の学校には受かっていたため、
「まあ、志望してる学校には受かりました」
と、冷静を装いながら曖昧な答え方をしました。
すると、Sさんは大興奮。
「えーー!あのK中学に受かったの?すごい!!私、あの中学から東大に行く人多いっていうじゃない?友達に自慢できるわ!」
いや、なぜあなたが自慢するのか、と心の中でツッコミつつ、息子の複雑そうな顔を見て、Wさんは自己嫌悪に襲われました。
■受験期に求められる“心の準備”
その後もSさんとは何度か遭遇し、その度に「中学楽しみね!」「どんな制服なのかしら?」などと無邪気に話しかけられました。そのたびにWさん親子は曖昧な返事を繰り返し、気まずさは積み重なるばかり。
4月、別の学校の制服を着ている息子を見たとき、Sさんは何を思うのでしょうか。
今思えば、「K中学ではなかったけど、別に志望していた学校に進学することにしました」と正直に言っても良かったのかもしれません。しかし、結果が出たばかりで落ち込んでいた息子の気持ちを考えると、それはとても難しかったのです。
◇ ◇
受験には、家庭ごとにさまざまなドラマがあります。そして、そのドラマには“無神経な登場人物”が割り込んでくることも少なくありません。「結果どうだった?」と聞かれたときのために、上手にかわす“心の準備”が必要だった…と、Wさんは振り返ります。
かつては「中学受験をする」と公言する家庭は少なく、受験すること自体を隠す風潮もありました。その理由が、Wさんにはよく理解できるようになったそうです。
(まいどなニュース特約・松波 穂乃圭)
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