木から樹液をとって→何時間も煮詰め→完成したシロップはたった数10㏄…気が遠くなる工程を経てたどり着いた「至福の味わい」
クルミの木から採取した糖度約1度の樹液を何時間もかけて煮詰め続け、できあがったシロップはわずか数十cc--。そんな樹液シロップの手作り動画が、YouTubeで28万回以上再生されています。気が遠くなる濃縮作業に、「メープルシロップが高い理由が分かった」「ていねいな生活ってレベルじゃない」と反響が集まりました。
投稿したのは、野食などの動画をYouTubeで発信している、ちーとん。さん(@chieeton)。動画では、まずメープルシロップで知られるイタヤカエデの樹液採取に挑戦しましたが、気温条件などが合わず、樹液があまり出なかったといいます。そこで、過去にシロップ作りに成功した経験があるクルミ(オニグルミ)に切り替え、樹液を採取するためのスパイル(管)を木に取り付けるところから再開しました。
そもそも樹液を煮詰めて甘くなるのは、樹液に含まれる糖分が、水分を飛ばすことで濃縮されてシロップ状になる仕組みです。こうした仕組みはメープルやクルミだけでなく、カバノキ(白樺)やブナなど他の樹木でも実践されており、世界各地でシロップが作られています。ただし、十分な糖度があって大量採取でき、かつ安全においしく食べられるという条件を満たした特定の樹木に限られます。その糖度のハードルは高く、メープルシロップの基準は糖度66%以上とされていますが、採取したばかりの樹液の糖度は、わずか約1度。ここから糖度を約66倍まで上げるには、気が遠くなるような煮詰め作業が必要になります。
鍋に樹液を注ぎ、アクを取りながら、ひたすら水分を飛ばしていきます。ある程度までは中火から強火で加熱できますが、とろみが出てきてからは弱火に切り替え、焦げ付かないようにかき混ぜ続けなければなりません。
「一番神経を使ったのは、鍋底が見えるくらい煮詰まってきてからです。常にていねいに混ぜていないと焦げてしまうので、火から持ち上げてはかき混ぜ、また火にかけるという作業の繰り返しでした」
何時間も煮詰め続け、とろみが出て糖度計が振り切れたのを確認できたときは、「やっと終わった!早く食べたい!」という安堵とワクワクが込み上げたそう。なお、使用した糖度計の上限は35度であり、最終的な糖度はそれを超えていたものの、数値の測定は上限で止まりました。ちーとん。さんによれば「メープルシロップの規格にある66%には行っていないと思うんですけど、もうここまで煮詰まったので、おしまいにしましょう」とのこと。長時間の煮詰め作業を終えるころにはすでに暗くなっていたため、その日は冷蔵庫にしまい、翌朝食べるのを楽しみにしながら布団に入りました。
翌朝、完成したシロップを、自分で拾ったクルミ入りのパンケーキにかけて味わいました。前回作ったシロップより色が黒く、採取時期が1カ月ほど遅かったため、味にも違いがあったといいます。
「前回は渋みがなく、やや酸味を感じる味わいでしたが、今回は酸味がなく味に深さとコクがあり、うっすら渋みを感じる、まったく違う味わいでした」
「パンケーキの甘い風味とシロップの甘さ、ナッツの風味が合わさって、噛むとクルミがゴリッと砕けて濃いコクが加わる。なんともいえない至福の味わいでした」
妻からは「深い味!何枚でもいける」との反応。さらにコーヒーに入れてみたところ、シロップの若干の渋さがコーヒーの苦味に隠れ、ナッツの風味とコクだけが加わる味わいに。「甘すぎずスッキリなのに深い味わいがある。最高のフレーバーコーヒーでした」と話します。
自然の恵みをいただくうえで、ちーとん。さんが心がけているのは「取りすぎないこと」と「その場を荒らさないこと」。森や林は基本的に誰かの土地であるため、許可を取った場所で活動し、来年も再来年も同じように採取できるよう、取り尽くさないようにしているそうです。
「ぜひ皆さんも野食をして、地球で生きている実感を味わってみてください!」
