阪神・近本 3・28開幕プロ7年目 テーマは「タイミング」に勇気をもって「チャレンジ」 そのために重要なのがメンタル
阪神の近本光司外野手(30)がデイリースポーツ読者に向けて、特定の打席や試合で何を感じていたか、何を考えていたかを明かす新企画「余韻」。第1回は「オープン戦の余韻」を振り返る。今季のテーマには「タイミング」を掲げ、チャレンジのシーズンとなることに意気込んだ。
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近本は打撃について「タイミング」という言葉を何度も口にしてきた。シーズンを目前にしても、姿勢は変わらない。
「今年(のテーマ)はタイミングかなと思います」
昨季は、力みをなくすため、「出力コントロール」をテーマに掲げていた。プラス面もあったが、力が抜けすぎてしまうこともあったといい、「打ち方や出力はその時うまく対応するかなと思うので」と今季は「タイミング」だけを意識。「実戦では反応で打つから、それまでの練習というのは逆にすごい大事になってくる」と話した。
今年はオープン戦8試合に出場。昨年の15試合に比べると少ないが、「(オープン戦だからと)楽観視することもないですし。その時の状態を100%理解することは変わらない」とフィードバックを重ね、収穫を得てきた。計27打席で近本は何を考えていたのか。
初戦の2月22日・楽天戦(金武)。「久々の実戦だったので、タイミングだけを意識して打席に入りました」と振り返る。第1打席は松井の直球に二ゴロとなったが、「タイミング自体は悪くはなかった」といい、「でもトップがうまく取れていなかった」とすぐに修正をかけた。
3月7日・DeNA戦(甲子園)では対照的な2打席があった。東への1打席目は、初球から2球連続で直球を空振り。2球で追い込まれるとボール、ファウル、最後は直球を中飛とした。一方で2打席目は4球目までを振らずカウント2-2に。ファウル、ボール、ファウル、ファウルと粘り、9球目の低め直球を見極めて四球を選んだ。
積極的に振った1打席目について、「意図はありますよ」と近本。その根本には見逃す時とスイングを仕掛けに行く時の目付けの位置の違いがある。前者は手元までボールの軌道を見ることができるが、「見てしまっている感覚が残りすぎると、打ちに行くってなったら詰まっちゃう」という。そのため、スイングを仕掛けに行く時は投手側でボールを判断する。
対戦経験のある投手は軌道を把握しているからこそ、スイングを仕掛けにいける。東に対してもそうだった。「ある程度タイミングが合っているからスイングを仕掛けにいった」。その上で「一番大事なのは、打ちに行ってボールを判断することなんですよ」と説明する。
ボール球に対し、タイミングが合ってるからといってスイングをかけていくことは、シーズンでは状態を悪くする要因になるという。そこで近本が確認したかったのは、「打ちに行くって決めたスイングに対して、実際それがボールだった時って我慢できるのだろうか」ということだった。スイングをかけにいくことで自身の状態を理解し、2打席目につなげた。低めの直球を左中間へのライナーとしたことには「左膝が折れるのが早かったから、ボールの下に(バットが)入ってしまった」と分析。「自分とボールの距離をもう少し取っていたら良かったかな」と次への糧となった。
8日の同戦の第1打席では、大貫に対し4球連続ファウルになると、首をかしげた。「軌道もわかっているのに、『このボールは何だろう』っていうのがあった」。打席の中で捕手・山本に球種を確認。タイミングが合わず、力みが生じていることに気がついた。
直球と多彩な変化球がある右腕に対応するため、ラインで捉えに行く意識を持ったが、最後は外に逃げるフォークに空振り三振。「ラインで捉えに行こうとしたら、どこでも届いてしまう。ストライクかボールかよりも、どうアプローチしていくかという方の意識が強かったから、物理的に届かないところまで振ってしまった」と説明した。
オープン戦を通しての発見は「タイミングが合っていればある程度の結果は出る」。しかしシーズンにおいては「チャレンジなんですよ」と勇気のいることだという。オープン戦では数字にとらわれることはないが、「シーズン始まって自分の状態が良くない、数字が欲しい時にそこまでのチャレンジができるかって言ったら、そうじゃない」と明かす。そのために重要なのがメンタル面。「それを『思い切り』って言うと思うんです。そこのメンタルを作るための他のアウトっていうところをいかに考えられるかだと思います」。テーマの「タイミング」を貫くため、プロ7年目でも挑み続けていく考えだ。
いよいよ開幕を迎えるが、「僕の中でそんなにいいスタートを切ろうとは思っていない。最終的にいいシーズンだったと思えるように」と気負いはない。「あくまでもチームが勝てばいい。みんなが打ってるんだったら、僕は打たなくてもいいって思えるタイプなんで」と淡々と話した。
それでも未知の挑戦にはなる。「4月の1カ月はフィードバックをしっかり取りながら、前半の方向性を決めればいいかなと。オフやキャンプで取り組んだことが間違いだったって気づく1カ月になるかもしれないので。それはそれでいい勉強にもなるし、成長にもなるかなと思います」。飽くなき探究心で新たなシーズンに臨む。
◆思いこもった新題字「余韻」 近本は「余韻」という題字を自ら選び、したためた。これまでは「謳歌(おうか)」だったが、今季のコラムについて話し合う中で、近本は「変えましょうか」と持ちかけた。
特定の試合や打席で考えていたことを明かすという趣旨に合う言葉は…「いい言葉ないですかね」と近本はおもむろにスマホを取り出した。「ChatGPT」というアプリでAIに質問。瞬間を意味する「刹那(せつな)」なども候補に挙がった中、「『余韻』どうですか?」と提案。近本自身の思いがこもった題字が決定した。
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