阪神 坂本いなければ近本FA移籍あった!?「交渉決裂-選択肢の中に単身海外もありました」“チカサカ”ケンミン対談
阪神の坂本誠志郎捕手(32)と近本光司外野手(31)が正月対談を行った。同じ兵庫県民で、お互いにフリーエージェント(FA)権を取得しながら残留を決断。その裏側も赤裸々に明かした。また、30代という年齢への向き合い方や、もし対戦したらというトークテーマも大盛り上がり。30分を超える語り合いで、2026年への誓いも立てた。
◇ ◇
-改めてお互いの印象を。
坂本「人間としても、野球選手としても、どっちもあんまり変わらないんじゃないですか。『近本光司』という人間のまま野球をしてるからなんですけど、野球になるから人が変わるとか、野球だから何か変わるってあんまりないです」
-常に近本光司という雰囲気か。
坂本「あんまり自分を変えてまで何かしたいという感じではない。人に言われてというよりも自分の中で変えたいと。何かを人に委ねるということは、あんまりないイメージですかね」
-捕手の分析は的確な感じがするがどうか。
近本「捕手だから的確とかじゃないです。誠志郎さんはそういう見方が好きだし、ドラマや映画に対しても、もしかしたらそうじゃないかな。今年オススメしたアメリカのドラマがあって、僕が先に全部見ていて、デュプランティエも見ていて勧めたんです。『いや、これ生きてるやろ』『これ実はこうちゃうん』って、大体そういうのが当たっていたり。なんで分かんねんとか思いながら、でも(先の展開を)言えないし。そういう考え方で、そういうふうに物事をする捕手というか。それが坂本誠志郎。捕手というのは、それがすごく有利に働くポジションだし。プレーだけじゃない人の部分というのも、そう見られる人なのかなと思います」
-近本の分析を聞いてみて。
坂本「そうなんですかね。形の上では(大学で)演劇学専攻なので。結構、考えなくていいところまで考えちゃう。考えちゃうというか、考えておきたいんですよね。そうなった場合にいきなり『わっ』て思いたくないから」
-話は変わるが、近本が残留を決めた時の気持ちは。
坂本「『やっぱりな』という感じはなかったです。それも結局(考えなくてもいいところまで)考えているから。『こうなったら、こっち行くんちゃうか』『こんなところから声がかかって』とか。もし僕が違うチームの人間だったら、どうやって近本に訴えたら『行きます』と言うんかな、とか結構考えていた。僕の感覚で『それを言われたら行ってまうんちゃうか』とか。表面だけじゃ決めないとは思っていた。みんなが思っている、兵庫県で地元でずっとやってきて、というのもあるかもしれないですけど。そこが大部分を占めてるわけではないと思ってたんですよ。『おっ、残った』くらいの気持ちでした」
-そんな見方もされているが合ってるか。
近本「半分は外れてるっすよ」
-五分五分ぐらいの葛藤は今、思い返してもあったのか。
近本「五分五分というか、いろんな選択肢をしっかり考えるようにしました。FA権を行使して国内FAでどこか行く、ポスティングをお願いする、自分のところのチームに残る。海外FAまで断念して、我慢して、あと2年頑張ってというのもいろいろ考えました。最終的には残留しましたけど、僕の中では楽しく野球をすることが第一条件。環境がどうとか、自分の夢がどうとかというのはあんまりない。そこまで環境を変えてまで自分は野球をしたいかと言われると、今はそうじゃないのかなと。同じチームでずっと成績を残し続けることって、もっと難しいと思って、そっちを選びました」
-2人ともFA権を持ちながら残留を決めた。今だから話せる、FAの苦悩や2人で話したことはあるのか。
坂本「いや、ないんじゃないですか」
近本「え、まじすか。僕、悩んだ時というか、感情がちょっと出ちゃった時に誠志郎さんがロッカーにいたんで。ポロッと言いました」
坂本「あぁ~。あったかな、そんなこと」
近本「ここでは言えないですよ」
-坂本に相談をした。
近本「相談はしました。どうでしたか?と。そういうもんだろうなと思って」
-その時にかけられた言葉が、ふに落ちたのか。
近本「そうっすね。より冷静になれた。向こうは向こうで考えてくれてますし。周りは周りで言いたいこともあるし、それは自分でコントロールできるところなので」
-残留決断のかなり大きな一言になった。
近本「そうですね。誠志郎さんがあの時間にいなければ、交渉は決裂して、僕がFAを行使してハワイにも来られていなかったかもしれない」
坂本「決断を(他人に)委ねるのが好きじゃない、したくない。それ(決断)を委ねるレベルのことは大したことじゃないです。何か食べます。肉を食いたいです。俺は魚を食いたい。じゃあ魚に行きましょう。これ(他人に)委ねてますけど、委ねていいレベルのことは、自分にとってそんな必要じゃないとか、自分にとってそこまで価値がないことです。でも、そこまでの価値があることは、どんなことを言われようが委ねないです」
近本「今まで能動的に大きな決断をすることってないじゃないですか。プロに入ることだって、別に決断して入ってきたわけでもない。タイガースだってそうだし。進学で高校を選ぶとかも推薦が多いじゃないですか。元々、決まってるじゃないですか。数ある中から選べるわけで。となると、FAってすごい大きな決断になる。そういった意味では決断したかったなと思って。選んで良かったと思いますけど、でも、そうしなかったということもある」
-決断したかったというのは、移籍もしてみたかった。
近本「それは選択肢の中ではありますし。単身海外というのもありました」
-MLBという選択肢もあった。
近本「はい。いろいろ考えました」
-坂本も一昨年、決断を迫られて悩んだ。
坂本「うん、悩んでましたよ。チカ(近本)に決断を人に委ねないと言いましたけど、決断を人に委ねないけど、その決断をするまでに、いろんな人のことを考えるんです。自分であったり、家族であったり、ファン、チームメートだったり。人に決断は委ねないけど、その決断をするためにいろんなこと、いろんな人の顔を思い浮かべながら、その選択をしている時は人で選ぶということ。人が浮かんでる。それは僕もめちゃくちゃあった。僕はチカほど盛り上がりのないFA残留やったから(笑)。これが正解になるかどうか分からないじゃないですか。正解にできるかどうかはその後、自分がどんなところでどういう結果を生み出せるか。でも、その結果が出ること、結果を出したかったというのが正解かどうかも分からない」
-去年が一つの答えだった。
坂本「それはもちろん。勝つ方が絶対にいいし、自分が残って、いっぱい試合に出て優勝できたのは周りから見たら正解。だけど、これが本当に正解かどうか、そもそも価値観って分からない。勝っていなくても正解にできたかもしれないし、勝っても正解じゃなかった可能性もある。人の考え方なので。この1年だけで正解かどうか、答えを出すのも浅いかなと思う。まだまだ先も見ないといけない。彼(近本)は僕以上に正解かどうか考える、考えの深さもかなり深いと思う。だから何年かたった時に正解だったかを聞いたら、『勝ち=正解』ってわけではないと思います。限りなく正解に近くはなるかもしれない」
-2人とも複数年契約で30代に入って、体との向き合い方はどう考えているのか。
近本「衰えていくものだけれど、体の衰えというのは、結局はパフォーマンスの衰え。技術でカバーできるという部分もあるんですけど、その土台にあるのが体。よりパフォーマンスが安定して出せる体づくりはすごく大事だと思う。できる限りあらがいながら衰えていきたい。年を取る、老いていくから逆に面白いものが見えてくるんじゃないかな。そうなってからが本番かな」
坂本「(捕手は)技術と頭で体の老いをカバーできるポジション。体は衰えたとしても、野球選手としてのいろんなスキルは衰えない。逆に言うと、体は衰えるだろうけど、それを何とか食い止める、いろんな幅が膨らんでいくポジションだと思う。若くいたいというのはないですけど、その年齢の中でベストなプレーをするだけに見合ったフィジカルと、あとはメンタルですかね。そっちから崩れてくるから、そこは大事にしたいです」
-メンタルを整える作業ということか。
坂本「整えるというか『もういいや』と思いたくないですね。『まだだ、まだだ』と思えなくなったら終わりでしょ」
-それはまだ先に設定してある。
坂本「そうですね。ほんとはプロに入る時に、35歳くらいで辞めようと思っていた。35歳くらいで辞めて普通のパパがしたいと思っていた」
-その考えはちょっと変わってきたのか。
坂本「ちょっとではない。子どものために野球を辞めて、普通のパパをして、運動会に行く、授業参観に行くとかしたいと思っていたんですけど、子どもができたら、野球をやっているパパというのをちょっとでも長く(見せたい)という思いがある。一番下の子がそれなりに分かるまでは(現役を)やっておきたいなという、心境の変化はあった。これで『35歳まででいいや』って終わったら、逆に僕のエゴで終わってしまうことになる気がした。そこは家族と相談した。だからぜいたくなことは言えないですけど、衰えて、もう力がないから辞めるという選択をするんじゃなくて、自分なりの辞め方をしたいですね」
近本「(新しく結んだ)契約はそれを越えちゃうんですけど、僕も正直プロ入った時は(現役は)10年だと思っていたので、それまで野球ができたらいいなと。むしろ、そこまでできるかどうかというところもあった。でも体がボロボロになってまで、僕はどんな場所でもいいから野球をしたいとは思わない。引退してからの方が人生は長いし、膝とか腰とか手術をしてボロボロになって、60歳でもう歩けないですというのは絶対に嫌。僕は僕の人生だし、僕の家族の人生。できる限り健康な状態で、肩が上がらないぐらいやったらいいと思いますけど、足腰はしっかりケアしたい」
-長期契約が終わったタイミングで、どう思うか。
近本「どう感じるかじゃないですか。あと5年は野球ができる。必死に老いを感じないように、ケガをしないように」
-最後に、お互いの今季に期待するところは。
坂本「打率3割、20発、30盗塁ぐらいじゃないですかね」
近本「それは体がちょっともたないんで(笑)。僕は誠志郎さんのスローイングをずっと見てきたから、いいところに投げるのを。僕が今年は盗塁王を取れるように、走られないようにしてください」
坂本「打率3割、20発、30盗塁は低いな。去年テル(佐藤輝)がめっちゃ頑張ってMVPを取って、兵庫県人が頑張っているので、2人でMVPを争いたいですね」
近本「前回は村上」
坂本「村上か。チカは日本シリーズMVP。僕はいろんなところで、ひたすら村上の時も、テルの時も陰のMVPばっか言われてた。僕は表でMVPを争えるようにします」
◆近本 光司(ちかもと・こうじ)1994年11月9日生まれ、31歳。兵庫県出身。171センチ、70キロ。左投げ左打ち。外野手。社、関学大、大阪ガスを経て18年度ドラフト1位で阪神入り。プロ1年目の19年から7年連続打撃タイトル獲得を継続中。最多安打1回(21年)、盗塁王6回(19~20、22~25年)。ベストナイン5回(21~25年)、ゴールデングラブ賞5回(21~25年)。
◆坂本 誠志郎(さかもと・せいしろう)1993年11月10日生まれ、32歳。兵庫県出身。176センチ、79キロ。右投げ右打ち。捕手。履正社から明大を経て15年度ドラフト2位で阪神入団。25年は自己最多117試合に出場してチームのリーグ優勝に貢献。ベストナイン1回(25年)、ゴールデングラブ賞2回(23、25年)。
関連ニュース





