阪神初連覇 藤川監督涙「苦しかった…です。一番は…難しいけど、選手を守れたことですね」球団史上初1位阪神2位巨人で決着

 「広島6-4阪神」(3日、マツダスタジアム)

 猛虎の黄金期到来だ。優勝マジックを1としていた阪神は広島に敗れたものの、2位・巨人がDeNAに敗れたため、2リーグ制以降では球団史上初となるリーグ連覇が決まった。藤川球児監督(46)は宿敵・巨人とのデッドヒートを制し、史上初めて「1位・阪神、2位・巨人」でゴールテープを切った。新人監督からのセ・リーグ連覇は初の偉業となった。

 扉の向こう側で選手たちの歓声が響く。泣き声や笑い声。幾重にも重なる声が重圧を解放した。

 夢か…いや、違う。デーゲーム後、宿舎で巨人戦を観戦。全員で歓喜の瞬間を見届けた。震える唇をギュッと結び、込み上げる涙を笑顔で隠したが、背中に伝わる声に藤川監督の涙腺は決壊した。頬を伝う涙は信じた男たち、愛した“子どもたち”の温もりでもある。

 「苦しかったですね。一番は…難しいけど、選手を守れたことですね」

 何度も声を詰まらせながら激闘の日々を思った。想定外の幕切れは、2リーグ制以降、球団史上初の連覇とともに記憶に残る。創設91年の歴史で誰も成し得なかった偉業。修羅の道を駆け抜けた139試合目、ついに前人未到の頂に立った。

 8月16日、広島戦(マツダ)。連覇を目指す道中のチームは、空中分解寸前の危機に陥っていた。試合前のシートノックに佐藤輝、森下の姿がない。直前で「体が張っている」と訴え、無断でトレーナー室に駆け込んでいた。ノック後、ベンチ前の円陣に就任2年目で初めて顔を出し、責任者として管理できなかったことをナインに謝罪。その後すぐに2人をコーチ室に呼んだ。

 「チームとしてやらなきゃいけない時がある。あってはならないことだ。そんな勝手な行動はメジャーでも通用しない」

 修羅の道と表現したタイガース36代監督。チームのために阿修羅のごとく鬼にもなった。18日のヤクルト戦(京セラ)。試合前練習中、佐藤輝がベンチに座る藤川監督の元に向かい、自らの行動を深く謝罪。その上で「試合でベストパフォーマンスを出すために、ノックをしない日も作ってもらえないですか」と訴え、指揮官も理解することで歩み寄った。

 中野は「バラバラになりそうな時もあった」と述懐した。一方通行ではなくなった関係を、佐藤輝も「選手が思ったことを素直に言える。そういうのは、すごくいいですね」と感謝。同戦では1点を追う九回、佐藤輝の29号で同点に追いつき、大山の14号で劇的なサヨナラ勝ちを決めた。「結束力が高まった」。試合後、藤川監督は確かな手応えを語った。チームの歯車が再び動き出した。

 もう1つの転機は工藤を抑えに起用した8月13日の巨人戦(東京ド)。「間に合うかどうか、あの時点では勝負だった」という決断は、タイガースで生きた男の経験値だ。「岡田監督時代の2004年に僕自身がそうでしたから」。シーズン途中からリリーフに定着。JFKとして輝いた日々が背中を押した。「経験していなかったら何一つできてなかった。感謝したいですね、先輩方に」。長い歴史が紡いだ偉業でもあった。

 46歳の青年監督。選手として没頭した現役時代は、3人の子の育児を妻に任せることが多かった。「いまの選手たちは自分の子どもと同じくらいの年齢。矢面に立ってあげられる時間は限られる。娘、息子にはしてあげられなかったから」。時に、相手の死球にこらえ切れずベンチを飛び出したことも、石井の左アキレス腱断裂を語った日や、サヨナラ勝ちした試合後には涙を流すこともあった。ともに笑い、泣き、喜んだ連覇までの道は“親子”の成長記録。「選手を守ることができました」と静かに涙を拭った。

 恒例の胴上げはない。グラウンドに響くファンの歓声もない。ただ、そんな記憶に残る優勝も、長い歴史の1ページだ。

 ありがとう

  我らの誇り

    タイガース-

 打倒・巨人でつかんだ球団史上初のリーグ連覇だ。ファンの願いを一身に受け、先人たちの思いを背負って戦った日々。夢は結実、思いは昇華した。「恩返しの役割で監督業を引き受けた。どう思われても恩返しをしなければ、と。最高の結果になった。やってきたことが間違いではなかったと、証明することができました」。感謝の先に、まだ夢がある。期間限定の恩返しには、まだ続きがある。

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