クレイジーなのか?

 【7月29日】

 決勝戦のノーヒットノーランはなかなかお目にかかれない。この日フルで見させてもらった高校野球島根県大会のファイナルで石見智翠館のエース山崎琢磨が快挙。甲子園大会の楽しみが増えた。

 準々決勝で9-1、準決勝は9-0と、2戦連続コールドで勝ちあがり、決勝も8-0の完勝。そんな智翠館が唯一接戦を余儀なくされたのが、1-0で勝利した3回戦の開星(糸原健斗の母校)戦だった。強力打線は開星2投手に10三振を喫し、四回に挙げた虎の子の1点を守り切ったわけだが、それ以降は優勝まで横綱相撲。印象的だったのは、どれだけ点差が開いても犠打で走者を進める等、手綱を緩めない野球だったこと。

 勝負は下駄を履くまで分からないという言葉がある。

 優勢な者に対しては「最後まで油断するな」と戒告し、劣勢な者に対しては「最後まで諦めるな」という激励として機能する諺だけど、20年ほど勝負の世界を取材してきた僕なんかは、度々この言葉を思い浮かべることがある。もう勝ったも同然…油断には必ず落とし穴が待っている。そんな戒めからだろうか、石見智翠館の戦いに〈手加減〉を感じなかった。

 東京オリンピックの各競技に目を奪われる毎日だけど、近頃こんな言葉がよく話題になる。

 unwritten rule

 明記のない規則、つまり「不文律」とか「暗黙の了解」なるものである。野球でも時に見るものだけど、卓球界にもそういうものがあるらしく、一部中国メディアは伊藤美誠が不文律をやぶったとして批判している。

 同メディアの報道によれば、相手を0ポイントに封じセットを取ることはマナー違反とされるとかで、一昨日の女子シングルス準々決勝で韓国エースを相手に11-0の完封を狙った伊藤の卓球は「クレイジー!」だそうだ。

 いろいろ考え方はあるし、押しつけるつもりはないが、個人的には真剣勝負の世界でそんな不文律は要らないと思う。「どうぞ」と1点を献上するなんて逆に相手に礼節を欠く行為とさえ感じる。

 なるほどと納得できる不文律もある一方で、それ要る?とギモン符をつけたくなるものもある。卓球界もそうだ。伊藤が不文律を知らないはずもなく、彼女はそれを承知のうえで勝負に徹したと想像するけれど、そんなものを知らず純粋に卓球を見ていた僕は、伊藤が相手に失礼だなんて全く感じなかった…それどころか、1点もやるなよ!と、テレビの前で声をあげたほどだ。

 その競技の特性、時間制限のあるなしによって、捉え方は異なるけれど、野球界のそれもまた微妙なことがある。例えば何回で何点リードしていれば「盗塁」は不文律に引っ掛かるのか。六回以降、6点差、7点差がそれに当たるとされるが、それも状況によりけりで一概にあてはまらないのでは? あとのない国際大会に於いて何でもかんでも「相手に配慮しろ」は、スポーツマンシップとは別次元のハナシだと思う。=敬称略=

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