くたばれ、消えろ…

 【7月31日】

 Eu sempre tenho…こう書き出されたポルトガル語を訳せるアタマは僕にないのだけど、翻訳機能に頼らせてもらえば、メダリスト五十嵐カノアの悲しみ、憤りが伝わってくる。

 東京五輪新種目のサーフィン男子で銀メダルを獲得した五十嵐は自身のツイッターを更新し「我慢できません」と綴った。何かといえば、この度の五輪で日々トレンドワードにもなっているアスリートへの中傷に対してだ。

 五十嵐に対しても、確かにあった。ブラジル人と思われるサーフィンのファンから心ない言葉が並び、中にはこんなツイートも…

 Olympics judges favoring Japanese athletes

 直訳すれば〈日本選手を支持するオリンピック裁判官〉。つまり「あなたが勝てたのは開催国贔屓の不平等な採点のおかげ」だと。

 準決勝でブラジル選手に勝った日本の若きスターへ、リプ欄で言いたい放題…これに対し五十嵐はポルトガル語で「僕は常に他の選手に最大限の敬意を払っていますが、自分でコントロールできないことについて悪口を言いたがる人には我慢することはできません。僕は最善を尽くした、ただそれだけです」と投稿したのだ。

 スポーツのジャッジは基本的に人の目でなされるものである。国際試合に於いてもジャッジの質が酷いと感じることはある。侍ジャパンの初戦、ドミニカ共和国戦もそれに当たると僕の周辺は概ね語っていたし、サッカーでは「中東の笛」なるものが有名だけど、いかなるものも、五十嵐が語るように「自分でコントロールできないこと」。ジャッジそのものへの物言いは分かるが、腹いせのごとく当該アスリートへ怒りをぶちまけるなど、僕のアタマでは理解の範囲をこえるし、そんな者にスポーツ観戦の資格はないと言いたい。

 「とある国から、『○ね、くたばれ、消えろ』とかめっちゃDMくるんだけど免疫ありすぎるオレの心には1ミリもダメージない」

 これは、卓球の混合ダブルスで史上初の金メダルを獲得した水谷隼のツイートである。これにどうこう書くのもアホらしいけれど、同試合は「審判の判断が公平ではなかった」=「そんな試合で金メダル獲って嬉しいか」なる中傷が散見された。敵陣のファンから罵倒されることもあれば、自軍、自国のファンから攻撃されるパターンもある。好きゆえの熱情が溢れる叱咤は分からなくもないが、悪意ある「はけ口」からアスリートを守る手だてはないものか。

 競泳男子200m個人メドレーで4位に終わった瀬戸大也は、今大会自身へ向けられた中傷について「言われるきっかけを作ったのも自分…」と語ったが、かといって匿名の心ない誹謗が野放しにされていいわけがない。

 阪神でも今季、自身のSNSを閉じた選手が何人かいる。「社としてもSNS対策は必須だと思っています」。アスリートを守るべく阪神球団副社長・谷本修のそんな言葉を思い出す。=敬称略=

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