セピア色の栄光は要らない…

 【8月3日】

 サッカーも好き…そんな虎党が周りにあまりいないので、ここで森保ジャパンを書くのは少し気が引けるけれど、でも、ごめんなさい。スペインとの準決勝はさすがに書かずにはいられない。

 戦前から予想できたことではあったけれど、無敵艦隊はそりゃ強かった。スペインのフル代表でレギュラーを張るバルサの至宝ペドリの創造性にはタメ息が出る…なんて書き出せば止まらない。

 ワールドカップを1986年のメキシコ大会から観てきた僕にとって、国際大会で決勝進出をかけて日本がスペインと…なんて夢のまた夢だった。アンダー世代ではこれまでもメダルを獲得してきた侍だけど、オトナ世代のメダル獲得は1968年のメキシコ五輪以来、53年ぶりの悲願なのだ。

 86年といえば阪神唯一の日本一の翌年だから、「あぁ」とピンとくる若い虎党も多いかもだけど、68年って一体いつのハナシだよ…そうか、52歳の矢野燿大が生まれた年か。そんな昔の栄光が未だに礼賛されているようでは、93年のJリーグ開幕以降も、02年の日韓W杯以降も、実は、日本サッカーの本当の夜明け、進化はなかった…と言いたくもなる。

 日本サッカーの発展に寄与された方々に敬意を表しながら、あえて書かせてもらうならば、そろそろメキシコの銅、もっといえば、釜本邦茂のセピア色の映像とはサヨナラしなくては…とずっと思ってきた。そういう意味でも東京五輪で銅メダルを乗り越えてほしい思いが強かったので残念だ。

 10代でバルサに見そめられる。レアルの一員になる。そんなフットボーラーが日本に現れるなんて僕のような昭和のサッカー経験者からすれば、それこそ夢の世界だった。久保建英にとってスペイン戦は、高ぶりはあっても、その名に押しつぶされるカードではなかった。レアルのタケを知る敵陣が久保をリスペクトし警戒した一戦は見どころ満載だったし、とはいえ、日本に負けるわけにはいかないスペインのプライドが存分に見えたことも、僕にとって心地よい時間になった。

 ここで虎のハナシへ飛ぶのが当欄なんだけど、サッカー五輪代表のメダルについてあれこれ考えていると、それこそ、阪神が優勝争いすれば必ず流される85年の映像を想起してしまうのだ。バース、掛布、岡田…3人のレジェンドが今も担ぎ出され、賛美される。球史を紐解けば、例えば巨人は85年から昨年まで15度リーグ優勝し、日本シリーズに13度出場しているので30~40年前の優勝が特別礼賛されることもない。デイリースポーツ評論家の岡田彰布と話せば、その当事者でさえ、85年の思い出はもうええやろと言いたげに見える。

 そうなのだ。大昔の栄光はもうええ、のだ。物怖じしないサッカーの先導者がタケであるならば、虎のそれはテルだろうか。日本サッカーにとってメキシコ五輪の銅がそうであるならば、阪神にとって85年の栄光をこえるために、日本一の連覇を目指す旅を矢野阪神に求めたくなる。=敬称略=

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