It should be…

 【8月13日】

 あの男がまだ現役なら、矢野燿大にこう言ったに違いない。

 「It should be me!」

 リーグ戦再開の先発は「オレだよ。オレしかいないだろ!」

 阪神のレジェンド助っ人ランディ・メッセンジャーである。

 いつもランディの側にいた阪神球団通訳の栗山正貴に聞いたことがある。開幕戦や交流戦の初戦、後半戦のリ・スタート、大事なマウンドになれば、決まって「オレがいくべきだろ!」…そういう発言は「常にしていましたよ」と。

 この夜を迎えるにあたり、西勇輝が矢野に先発志願したかどうか分からない。例えそうでなかったとしても、彼ならそのつもりで調整していただろうし、その役割を担う自負はあったと思う。

 「オレがいくべき」なんて、なかなか言えるものではない。とはいえ、そういう主力がいればボスにとってはとてもありがたいし、心強い。前監督の金本知憲からもそんなことを聞いたことがある。

 またサッカーを例えに出して…なんてツッコまれそうだけど「オレがいく!」といえば、東京五輪の侍ブルーを想起する。森保ジャパンはベスト4をかけたニュージーランド戦でPK戦までもつれたわけだけど、キッカーは全員「申告制」によって決められた。

 学生時代マジメにサッカーをやってきた者に言わせてもらうと、それってめちゃくちゃ男前だと思う。四年に一度、一発勝負のあんな大舞台で「オレが蹴る!」なんてなかなか言えるもんじゃない。

 「選手たちは勇気を持ってキッカーとして立候補してくれた。その勇気やこの試合を自分が決めて勝ち切るという思いが、PK戦の勝利につながった」

 監督の森保一は、名乗り出た選手への賛辞を惜しまなかった。

 ただ、これも結果を出したから美談になるのであって、あのPK戦を落としていれば、どうだったか。粋なエピソードも埋もれたままだったかもしれない。

 この日8月13日はランディ・メッセンジャーの誕生日である。40歳になった彼はネットで古巣のゲームをチェックしただろうか。

 19年のカープ戦で日米通算100勝を達成したランディは、しかし「日本だけでの100勝の方が意味がある。その時大きく喜びたい」と語っていた。結局、悲願まであと2勝を残し引退したわけだけど、「It should be…」の伝説は語り継がれる。それは、彼が結果を残したからだ。

 ランディの「志願通り」先発した開幕戦の通算成績は、6試合で3勝1敗、防御率3・11。勝率は・750を誇った。

 この夜、通算100勝まであと「1」勝のまま再び足踏みした西勇輝である。何とか早く…とオッサン記者はやきもきしてしまうけれど、本人の胸中はどうか。

 4失点の初回以降立ち直っただけに、もどかしいに違いない。次こその思いをファンと共有しながらその時を待ちたいし、ランディのごとく「オレが!」の心意気で腕を振る姿を見たい。=敬称略=

関連ニュース

編集者のオススメ記事

吉田風取材ノート最新ニュース

もっとみる

    スコア速報

    主要ニュース

    ランキング(阪神タイガース)

    話題の写真ランキング

    写真

    リアルタイムランキング

    注目トピックス