思い切っていけ!それだけ

 【8月25日】

 だから、夏はたまらない。朝から晩まで一日に5試合も拝めるなんて、嗚呼シアワセ…昔から高校野球びいきの当欄は、どうしても甲子園に目が向いてしまうので、まずはきょうも昼の部から…。

 今大会、智弁学園のメンバーに家族ぐるみの選手がいることは何度か書いた。きょうはその彼ではなく、ベスト8を決めた智弁の監督さんについて書いてみたい。

 「ほう」と唸ったのは、日本航空に1点リードされ、迎えた智弁六回の攻撃である。先頭で1番の垪和拓海(はが・たくみ)が長打を放ち、めぐった無死二塁のチャンス。ここで、指揮官の小坂将商(こさか・まさあき)が2番の岡島光星(おかじま・こうせい)へ送ったサインは何だったか。

 今年の智弁は全国制覇を狙えるいわば黄金世代。負けるわけにはいかない3回戦の勝負所。一発勝負のトーナメントで、イニング中盤のビハインド…ここは間違いなくバントだろう。そう思ったら、小坂はヒッティングを命じた。

 しつこいようだが打順は2番。確実に1死三塁とし、絶対的な信頼を置く3番、プロ注目の前川右京(まえがわ・うきょう)に託せば、同点はかたい。まずは試合を振り出しに戻し、勝機を探る…そう踏んでいたけれど、小坂は迷わず打たせ、またその期待に岡島が応えてヒット。無死一、三塁としこの回逆転に成功したのだ。

 六回はどんな指示だったのか?試合後、記者からそう問われた小坂はこんなことを言ったそうだ。

 「思い切っていけ。それだけですわ」

 高校野球であの局面の定石は犠打。でも、小坂が打たせたのは、小坂にしか分からない「裏付け」がきっとあるからだ。全責任を負う監督がそれをやりきった。それだけのことであり、裏目に出たらどないしよ…なんてちびっていたら務まらない。それにしても、小坂という人は、外見からして何だか肝が据わってそうだけど…。

 さて、我らが阪神である。嗚呼5試合目なんて見なきゃ良かった…なんて思わない。僕はできる限り、モニターに映し出される矢野燿大の表情、仕草を追うようにした。そりゃ、ガハハと笑うはずもなければ、敵軍のルーキーに拍手を送るはずもない。今季一番の険しい表情…であったかどうかは別にして、僕は思う。ここでこそ矢野の真価が問われるのだ、と。

 用兵や作戦面を僕がやいのやいの書くのはナンセンスだと思っているので、その類を書いたことがないし、今後も書かない。矢野にしか分からない「裏付け」がきっとあって、全て矢野の責任で治めていることだから…。例えば、気になるJ・マルテの昇格時期についても、矢野は「俺が全体のことを考えて俺が判断させてもらう」と語っていた。異論はない。

 それにしても巨人は智弁OBの4番が思い切っていきよったな。恩師も喜んでるってか…。

 さあ、2位と1差。矢野は僕らになんと言うか。もう「思い切ってやる。それだけですわ」でいいじゃないか。=敬称略=

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