あそこで振ってナンボ

 【9月1日】

 佐藤輝明が七回に代打で登場し空振り三振に倒れた。この打席に限っては、見る限りボール球のスイングは1球もなかった。これで27打席無安打…誤解を恐れず書けば、いいじゃないか!と思う。

 輝をスタメンで使うのか、外すのか。それは矢野燿大の裁量であり、矢野の決断に異論はないと先日当欄で書いた。でも、もし個人的な願望を聞かれれば、例え8番であれ、怪物ルーキーにはスタメンで出続けて欲しい思いはある。

 やはり、代打1打席で結果を出すのは難しい。この夜、最終打席で結果を出した大山悠輔を見てもそう感じる。4打席立って、その中できっかけをつかめ…って、コレ並の打者には言わない。ご存じ輝のポテンシャルがハンパないから、そう言いたくなるのだ。

 輝の打撃が下降線をたどった要因として、よく言われるのがボール球の追い掛け方。そこをずっと空振りしてちゃ、進歩はないよ-なんて辛辣な評論も見掛ける。

 (そんなの本人も分かってるわ…と、ツッコみたくなるけれど)

 この試合、ABCテレビの中継で解説していた下柳剛によれば、矢野は「振らない勇気も必要」と語っていたという。

 これまたオッサン記者の見解だけど、いつの時代も、好打者の条件は確かにそうである。

 ボール球の見極めでいえば、プロ野球の記録には、四球率(四球÷打席数)という数字がある。

 今季、この数字のセ・リーグ上位5傑を調べてみると…

 1、村上・176

 2、鈴木誠・156

 3、マルテ・151

 4、オースティン・141

 5、坂本・135

 この顔ぶれが何を物語るのか、説明は要らないだろう。

 ちなみに、阪神でマルテに次ぐのはサンズ(8位)。では、佐藤輝明は?

 ・051でセ・リーグ27位。

 だから??と言われればそれまでなんだけど、村上がそうであったように、1年目に下位だった輝が、もしかしたら来年、再来年には、この数字でも上位にくる打者になっているかもしれない。

 J・マルテの選球眼は、今さら触れるまでもない。

 得点には繋がらなかったが、唸ったのは八回の打席。その2球目外に沈むスライダーは、球審の手が上がるか上がらないかの際どいコース(判定はボール)。これを見極める技術があるから、2本目のヒットに繋がったわけだ。

 それにしても嬉しかったのは、大山悠輔の決勝打である。

 「前の打席で不甲斐ないバッティングをしてしまった。死ぬ気でいきました。3ボールから??見(送)る気はなかったです」

 泣かせるお立ち台だった。待望の一打は…ボール気味の球に手を伸ばし、バットを折って運んだものだ。「あそこで振らないようじゃ使えないというか…」。そう語る矢野は嬉しそうだった。そう、一概に数字ではかれないのもまた野球の醍醐味。輝に期待したくなるのもまた…。=敬称略=

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