スイングが速いゆえ

 【9月13日】

 プロ野球(阪神戦)のない月曜はよく電話が鳴る。朝からずっとスマホを耳に当てているので腕がだる痛くなるほどだ。野球関係者のみならず、各業界の虎党が今般もっぱら話題にするのは、そう。

 佐藤輝明はどうなんですか?

 ふた言目には、そんな調子である。どうなん?と聞かれても、当方は彼と面識もなければ、もちろん、連絡先も知らない。ま、たとえ知っていても、こんなときにわざわざ「バッティング、どんな感じ?」なんて、ぶしつけにLINEを送ることはない…。

 だから、逆に、みなさんに聞いてみるのだ。

 いまの輝選手はどんなふうに映っていますか?

 証言がタイムリーかつ生々しかったのは、先ごろ対戦したカープ2軍の関係者たちである。

 甲子園で開催された土日のウエスタン・リーグ広島2連戦で、佐藤輝は登録抹消後初打席に立ち、外野フェンス直撃の良い当たりもかっ飛ばした。2試合、8打席を〈特等席〉から見つめた敵陣の感想を聞いてみると…。

 「スイングが速いです」

 そう口を揃える。

 あぁ…。でもね、それはね、輝と面識のないオッサン記者でも知ってる。一応、沖縄のキャンプからずっと凝視してきたので…。

 「スイングが速いゆえに思うようにならないこともあるんです」

 ほう。

 「(体の)力もあるし、もともと、差し込まれるのを嫌がらないバッターでしょ」

 そう思います。

 どんなボールでも、長く見過ぎるきらいがあるということ?

 「高めの速球も、見過ぎて空振りしている印象です」

 本紙評論家の金本知憲は「そこ(高め)を狙い打つのも手」と語っていたけれど、ときにコース、球種を張って大きいのを狙う。そこで狙いが外れたらごめんなさいでいい-そういうことか。

 カープの面々のみならず他球団スコアラーはこんなふうに言う。

 「おそらく、佐藤君はまだあのコースを狙って振ったことはないのでは?そんなふうに見えます」

 先日、金本と落ち着いて話をする機会があったので、こんなことを聞いてみた。

 一流の打者とは?

 金本は即答した。

 「インコースを苦にしないバッターよ。坂本(勇人)も山田(哲人)もインコース打つやろ」

 一流打者に対し、バッテリーが内角を攻めるのは定石である。

 「最初はベース板ぎりぎりのインコース。こっちがそれを打てば今度はそれよりもボール半個、一個分内側にくるし、そこも打ち返したら今度は体よ」

 金本はそう言って、笑う。

 内角攻めで上体を起こされ、最後は外。幾多のそんな配球、駆け引きに打ち勝ってこそ一流。

 じゃ、輝は??とは聞かなかったけれど、もちろんその才を大いに認めていた。楽しみなのはこれからよ-平成最強打者の顔にそう書いてあった。=敬称略=

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