もっと大事な人生
【9月17日】
Twitterを始めてひとつ悩みが増えた。答えづらい質問にどう反応すれば…ということだ。例えば、「風さんの推しの選手を教えてくれませんか?」。これ、実は、けっこう悩む。
というのも、誰か一人挙げれば「選手を好き、嫌いで見ている」とも取れるし…って考え過ぎか。
記者とて人間だから肩入れもする。じゃ、肩入れする基準は何かと聞かれれば、オッサン記者は、古臭いかもだけど、一つは、挨拶ができる選手だったり…まず「野球人である前に」を見てしまう。
打撃コーチ新井良太が、この度引退を表明した俊介に対し「これからの人生のほうがもっと大事だから」と、広陵高校の先輩として諭していたが、本当その通りで、プロ野球選手は現役を終えてから〈価値〉を問われることも多い。
いつの間にか選手全員が自分より歳下になってしまったけれど、リスペクトの対象に年齢は関係なく、それこそ、僕が藤浪晋太郎や大山悠輔らに肩入れするのは、野球技量に対してよりもまず、人間性に敬意を抱くからだ。
プロはグラウンドで結果を出してナンボ。もちろんそう。でもね概して「野球人である前に」を失念する選手は、「結果」を出し続けることができないものだ。
いやいや、その基準って、あんたのモノサシだろ?
はい、その通り。藤浪や大山がそうであると感じるのは、僕のモノサシでしかない。それを前提に書けば、中堅世代なら俊介はもちろん、荒木郁也だってシャイで誤解されがちだけど、心優しく、良識の備わるアスリートである。
選手とプライベートで付き合う必要はありますか??Twitterでそう聞かれたこともある。
これは、僕が目指すスポーツ記者像に照らせば、イエスだ。
記者席から打席やマウンドを見つめているだけでは、その選手の人となりや陰の努力までは見えない。そこを書きたいと感じるか感じないか。読者がそれを求めていると感じるか感じないか。僕は大いにそう感じるので、プライベートの付き合いも大切にしてきた。
俊介とは、グラウンド外で会うこともよくあった。しかし…新人時代の初取材は忘れもしない、岡山駅。あきらかにこちらを警戒しながらボソボソと答える面持ちをよく覚えている。もし、あれからメシを一緒することなく12年間過ごしていれば、彼は今も僕にボソボソと話していたに違いない。
「カネさん、全然、怒ってなかった。本当に、何とも思ってないって。逆にすっきりしたって」
そう…例の件である。
麺も喉を通らない。コンビニにも行けなかった俊介にそう伝えると、彼は神妙に聞いてきた。
「ほんまに??風さん」
ほんまよ。
このやり取りを書けば、藤川俊介という選手、そして、彼という人間に肩入れしたくなるワケを少し分かっていただけるのでは…。
俊介、寂しいけど…お疲れ様でした。もっと大事なこれからの人生も、よろしく…。=敬称略=