どうか球児にチャンスを

 【6月28日】

 DeNAベンチが早くも三回に動いた。2点を追う2死二、三塁で三浦大輔が代打・桑原将志を告げると、この用兵が的中し同点。1打席でベンチに下げられたのは右翼スタメンの楠本泰史だった。

 楠本といえば、横浜の小学校で松井裕樹(楽天)と同級生だったこと、花咲徳栄から東北福祉大へ進み大学日本代表で4番も担った強肩巧打の…いや、僕の知る彼のキャリアを書きたいんじゃない。 この夜、横浜F・マリノスとの共同セレモニアルピッチで客席を盛り上げていた楠本だけど、早々に代えられたワケは最初からゲームを見た読者はご存じだと思う。

 初回に島田海吏の打球をファンブルし中野拓夢の生還を許すと、三回は近本光司の打球を今度は両手で捕球にいきながら、またもファンブル。いきなりの2失策で、いわば懲罰交代。楠本からすれば打席での挽回、そのチャンスさえ奪われた格好である。代打桑原の同点タイムリーはありがたかったはず…だけど、一方で素直に喜べない自分もいたはずだ。

 これも番長の愛のゲキ。プロだから仕方ないし、この悔しさを反骨心にかえ、やり返すしか…。

 楠本に限らない。ミスを取り返すチャンスはある。その機会をどう捉え、どう活かすか。彼の今後に注目したい…そんなふうに考えてゲームを追っていると、あれよあれよという間に虎打線がスコアボードに0を並べていく。打者の反応をうかがい尻上がりの大貫晋一を好リードした嶺井博希にやられた感が強い夜だ。

 気象庁が関東にも近畿にも梅雨明けを発表し、6月なのにもう夏本番。そうなれば、ウチナンチューの嶺井はやはり酷暑に強い?ほかにも神里和毅、宮國椋丞ら、沖縄出身者がセ・リーグで最も多いDeNAは強敵になるか…

 なんて考えながら、沖縄の小さなネット記事を見つけて、いま僕はやるせない気持ちでいる。

 阪神キャンプ地のお隣に位置する宜野座高の野球部にコロナ陽性者が出たそうで、甲子園大会の県予選を辞退したという。

 宜野座は1回戦で南部工に勝利し、26日の2回戦で興南と対戦予定だったが不戦敗。筆がハマスタから横道にそれてしまうけれど…

春夏合わせて3度甲子園出場の実績がある宜野座高野球部は、とても身近な存在で、タイガース、そして、我々もお世話になる宜野座村の無念は他人事じゃない。

 記憶に新しい今春のセンバツでは、京都国際が開幕前に出場辞退し、広島商は1回戦を突破した後に陽性者が出て次戦出場を断念せざるを得なくなった。今夏の地方大会は感染者や感染が疑われる選手が出た場合に試合開始前まで登録変更を可能にするなど、高野連の感染拡大予防ガイドラインに沿って開催されているわけだけど、どうかもう一歩突っこんで救済の道を探ってもらいたい。もう、コロナ禍で3年。どうしようもないで終わらせるのではなく、しかるべきオトナが探ってほしい。陽性はミスでも罪でもない。どうか、球児にチャンスを。=敬称略=

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