押しつけるつもりはない

 【7月8日】

 甲子園球場の近くで参院選の期日前投票を済ませた。衆参にかかわらず国政選挙は欠かさず投票している。「読売新聞です」と名乗る方から出口調査を求められたので答え、会場をあとにした。

 友人が今回の参院選に出馬した話を先日ここで書いたけれど、その友人の「えっ…!?」というツイートで奈良の事件を知った。投票を済ませたすぐ後だ。僕の生活圏だった西大寺駅、阪神でいえば小野寺暖、ヤクルトなら西浦直亨も馴染みのある場所だと思う。

 僕らの国、日本でこんなふうなテロが起こるのか。国を良くしよう。地域を住み良くしよう。今回の参院選も争点は様々あるが、選挙戦で見たいのは論戦のみ。それ以外の争いは要らない。

 いつも野球のこと、タイガースのことを深掘りする当欄が政治に触れることはまずない。今だって野球の話を書くためにキーをたたいているのだけど、今回の一件で議論すべきこと、大切なことは、政治に限ったことではない。

 こどもの世界でも、僕らおとなの日常でも、いろんなところに潜んでいる。

 自分はこう思う。でも、他人はこう思っている。仕事でも、家庭でも、普段そんなことだらけ。

 思想、信条に限らない。

 僕個人の感覚かもしれないが、最近多すぎるように思うのは、俺は正解、お前はバツ-という、押しつけ合戦である。

 ツイッターを始めて2年になるが、プロ野球の界隈でも、押しつけが甚だしい投稿を見れば、しばらくその画面を遠ざける。そんなとき、後輩クンたちから「風さん2日ほどツイートしてませんね」などとツッコミが入るけれど、それはそういう場合がほとんど。

 意見や批判と、押しつけはまったく違う。「テーブルにつく気がない相手」を前にすれば、言葉は無力。そんな世界は……。

 神宮球場で青柳晃洋が映えた。

もう、どんな論評も不要だろう。本人のコメントは虎番が取材したものを読んでいただくとして、僕は青柳の心を想像する。

 前回の登板、7月1日の中日戦(バンテリンドーム)で青柳は交代を告げられた際に、テレビに映るベンチ内で明らかに不服そうな表情を見せた。投手コーチ福原忍に肩をさすられても、ずっと。

 それを見ていた僕は「うれしかった」と書いた。「それでこそエースだと思う」とも。

 あの翌日、違う意見も耳にしたし、あの表情に対して色んな考えがあっていいと思う。が、押しつけるつもりはないけれど、僕の思い、意見は変わらない。

 ああいう顔をすれば、青柳が好むと好まざるとにかかわらず、必ずハレーションは起こる。自分を追い込むことにもなる。でも、それも本人承知のうえ。つまり、青柳にとっての「次」、この夜のヤクルト戦が矜持の見せ所だった。

 被安打3、無四球、完封。名古屋のあの顔をもう一度思い起こしうれしくなった。押しつけるつもりはないが…青柳晃洋は阪神の絶対エースである。=敬称略=

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