交代して喜ぶエースは…

 【7月11日】

 東京から帰阪する航空機でJ1神戸の選手と一緒になった。大迫勇也、酒井高徳、武藤嘉紀、山口蛍…国を代表するフットボーラーはやはりオーラがある。彼らが座った機内の後部はざわざわ…。

 先月の話である。サッカー担当を外れて久しいので、最近はJ1の日程に疎い。ヴィッセルはどこからの帰りかな?なんて思いながら、やはり探してしまったのは、希代のスーパースターである。

 あれ?イニエスタは?

 僕の座席の近くでもそんな声が聞こえてきた。結局伊丹に着いても見つからなかったけれど、前方席に座っていたのかな…。

 クラブの番記者でもサポーターでもないけれど、あのアンドレス・イニエスタが神戸で、すぐ近くに暮らしているというだけで、テンションは上がる。いうまでもなく、世界に誇れる至宝だから。

 そんなスターが前節の磐田戦で珍しく「怒りをあらわにした」という。複数の報道によれば、途中交代させられたことに不満だったようでベンチへ下がる際にペットボトルを蹴り上げ、取材エリアではメディアの呼び掛けに応えず、スルーしたのだとか。人格者で通る彼がそんな態度をとるとは、よほどの苛立ちがあったのか。

 旧知のサッカー関係者によれば酒井高徳がその心中を推し量り、こんなふうに語ったという。

 「交代を告げられてうれしいと思う選手はいない。そういうのはサッカー選手として絶対に持っていないといけない。(チームメートは)みんな理解している」

 神戸のこの一連の話を聞いて、青柳晃洋を思い出した。

 前々回の登板(バンテリンドーム)で七回に代打を送られ、不満げな表情を見せた青柳について、チーム、球団の関係者から様々な声が僕のもとにも届いた。これは先日当欄でも触れたけれど、その内容がどんなものかを書けば、立場によって角度はそれぞれ異なれど、好意的なものばかりだった。

 それは、青柳がここ2年結果を出しているから…という理由も多分にある。しかし、実績だけで人格が伴わなければ、なんやあいつ…と容赦がないのも、この世界。つまり、青柳が普段からどれだけ人望があるかという話にもなる。イニエスタのそれと同様に。

 僕が取材し、青柳の「人柄」を知るエピソードは、昨夏の話である。日本代表として東京五輪を戦った青柳が大会直後に岩崎優と共に鳴尾浜を訪れた日があった。2人は世界一を報告し、スタッフへの感謝を込めてサプライズで金メダルを持って来たという。トレーニングルームでは、居合わせたトレーナーら全員の首にメダルをかけてまわり、裏方との絆がより深まったと聞いた。

 「青柳投手のいいところは、気遣いもそうですし、まず、人のせいにしないこと」「みんな彼を支えていきたいと思っている」「最後まで投げる姿を見たいと思っている人間は多い。交代を告げられて喜ぶエースはいないでしょう」-。これが当欄の取材。頷けるものばかりである。=敬称略=

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