動かしてほしくない

 【7月12日】

 甲子園の放送席にデイリースポーツ評論家の新井貴浩が座っていた。TBSの知人によれば、彼のもの腰柔らかな口調と、何事にもポジティブな論調がとても好評だという。確かに僕の回りでもそれはよく聞く。

 プロ野球、サッカーなどアスリートと契約を結ぶ大手マネジメント会社の役員は言う。

 「人柄ももちろんあるんですけど、新井さんは今の時代をよく理解されています。多かれ少なかれ毎年スター選手が引退していきます。人気のアスリートがメディア側の人間になりますので特にこれからの時代は、潮流を読めない、アップデートできない解説者は、どんどん需要がなくなっていくと思います」

 業界で名だたるこの人は球界OBの名前を挙げそんな話をした。

 新井はこの夜も、いつも通り、柔らかかった。鳥谷敬とのW解説で息の合ったジョークも交えながら3時間ほどの放送時間で選手を悪くいうことは一度もなかった。

 しかし、だからといって球団に迎合する「御用解説者」とはまた違う。ネット裏から俯瞰し、感じること、見解は明確に述べる。この夜の解説では、阪神主軸のポジションもそのひとつだ。

 「なるべく大山選手、佐藤選手のポジションは動かしてほしくないですね。チームの中心選手ですから」

 新井が放送席で見解を求められたのは、新外国人A・ロドリゲスをめぐる起用法である。

 試合前に入団会見を行ったロドリゲスが戦力として加われば、矢野燿大の方針によると、そのポジションは一塁に限定される。となれば、大山はレフトへ。もし大山がサードに就けば、佐藤輝はライトへ…つまり、新助っ人の守備優先で「阪神の顔」となるべく4番と5番がポジションを動かされるわけだ。大山、佐藤にその心を聞いたわけではないし、「ホンネを教えて」と聞いたところで、少なくともシーズン中は「どこでもやります」と語るに違いない。

 よその庭が全てとはいわないけれど、例えば、Gはどうか。岡本和真は最近3年間、出場した全ての試合でサード以外、守っていない。坂本勇人は言うまでもない。

 首位ヤクルトの今季を見ても、全試合出場の村上宗隆のポジションはサードのみ。そういう意味では、1シーズンで3ポジションをグルグルこなす中心選手というのは、ちょっと見ない。解説の中で新井は「大山選手の一塁守備はうまいですから」と話していた。一塁手でゴールデングラブ賞を獲得した者だから分かる大山の適性…なのかもしれない。

 戸郷翔征に0を9つ並べられ、今季17度目の完封負けである。新助っ人への期待感はもちろん高まるわけだけど、心配症の筆者は、プラスとマイナスを算段する。

 ロドリゲスはレフトを守れないのか?球団幹部に聞いてみると、「いけるよ」とは返ってこなかった。つまり、そういうこと。もう打つしかないのだ。A・ロッドが本家張りに輝ければ…あれこれの懸案も杞憂に終わる。=敬称略=

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