青木宣親にしか聞けない
【2月16日】
浦添からコザを経て読谷、そして、宜野座へ。沖縄本島を南から北へ取材行脚した。毎年この時期に欠かさない「レジェンド詣で」を今春も…。球界最年長野手へのご挨拶である。
「あっ、風さん、ご無沙汰しています。何か、いつまでも若いですね~」
いやいや、一緒、一緒。
「うん。俺も若いって言われますけど…」
青木宣親が笑った。
ヤクルトのキャンプ地は大規模工事中で、メディアやファンの導線が大幅に変わり一苦労したが、42歳になったこの人のスタイルは何も変わらない。僕がお邪魔すると、室内練習場でひとり、黙々とバットを振り込んでいた。
「今年も阪神中心の取材ですか?」
他球団も見て回りながらね…。
そういえば、今シーズンはライトを守るって記事が載っていたけれど?
「そうなんです。僕はレフトでもライトでも、どっちでもいいんですけどね。経験値ありますから」
え~っと、「ライト青木」といえばしかし、随分久々に見る気がする。
「そうそう。ライトを守ったのはメジャーの時以来かな。日本でライトって…たぶん、オールスターで守ったことがあるくらい」
景色が変わる。
「そうなんですよ。でも、神宮ではヤクルトファンが後ろにいるから、なんだか、いいですよね…。それも新しい経験だなって。何かうれしいし、楽しみのひとつではありますよ」
今も「新しい経験」が愉しい…。なるほど、そういう感覚なんだ。
さて、ここからはちょっと、指折りのレジェンドだから聞ける話題に…。
阪神屈指のヒットメーカーをどんなふうに見ているのか。青木とそんな話になった。
「ふたりともいいバッターですね」
近本光司、中野拓夢の1、2番コンビについて青木はストレートに感想を口にした。
「いま、野球のレベルも上がってますから。ピッチャーの球も速い。変化球も速く曲がる。そんななかで結果を出すというのもすごいことなんですけど、3割打つことが難しくなってくる時代で、あれくらい成績を残しているわけですから…」
首位打者、三度。最多安打、二度。希代の名球会ヒッターが、「投高」の令和時代にヒットを量産する「チカナカ」を敵陣目線で称える。
「年数とともに結果を残しながら、自分を少しずつ変化させているような気がするし、おそらくどこか痛いながらに試合に出ているんだろうけど、そんな中でも打ち続けたり、試合に出続けるというのもまた、いい選手の条件だと思うし。こちらにもそういう姿が見えるからね。チームを背負っているような2人だと思うから…」
早大でしのぎを削った同級生鳥谷敬が3年前に引退したが、見た目30代の彼は、守備位置の「再コンバート」でみずみずしさを増したように見える。青木の視点で虎を追う。贅沢な取材である。=敬称略=