菊が認める熊の進化
【2月26日】
菊池涼介に会ってきた。沖縄市コザを拠点とする広島カープのキャンプ地である。プロ13年目。黙々と練習する日本球界の至宝は元気だった。目が合うと、いつも通りの笑みを浮かべ…。
「風さん、元気っすか?」
握手を交わした掌にいつも敬意を表する。これが、この国を代表する名手の手皺か…と。
年々、どうしても体調管理で気遣うことが多くはなると思うけど?
「確かに…。もう34歳ですからね」
3月に歳を重ねる。早いね…。
「ほんと、あっという間ですよね。まあでも、今回沖縄へ来て、若い子がいっぱいいるし、そういう若い選手の力も借りながら、元気をもらいながらやってますよ」
パワーは若手からもらえるもの?
「やっぱり、若いなぁって思うし、負けねえぞ!っていう自分もいるし。そういう力に引っ張られながらね…」
若手といえば、キャンプ前。「チーム菊池」の合同自主トレにも多くの若い力が集った。カープの矢野雅哉、前川誠太、ヤクルト村上宗隆、阪神からは熊谷敬宥も参加していた。
「自分が伝えられることは伝えたいし、若い選手には吸収していってもらって…。年々みんな良くなってます」
じゃ、熊谷も?そう聞けば、菊池の口は滑らかになった。
「クマ、めちゃくちゃうまくなりましたよ。体の使い方が上手になったというか…」
熊谷がキクから得たいものって?
「どうなんでしょう。でも、彼が僕の自主トレに来た最初の年は、3日間くらい放置したんでね(笑)」
放置!?
「もちろん普通に(自主トレの)球場のロッカーとかでは喋りましたよ。でも(グラウンドでは)3日間くらい黙って見てみないと、この子がどういうふうになっているとか、こうしたほうがいいとか、言えないし分からないので…。こっちもジーッとクマの守備を見ていたので声を掛けられないんですよ。スタートがそんな感じだったから、クマが『今は分かるんですけど、あの時は…』って笑ってました」
ある意味〈無視〉したんだ??宜野座へ戻り、その話を熊谷に振れば…
「最初、めちゃくちゃビビってました」と、少しはにかんだ。
菊池が「もうあまり言うことがないくらい、うまくなった」という熊谷の進化をこの日の午後、サブグラウンドで見させてもらった。佐藤輝明と共にサードで受けた特守ノック。背番号4の「体の使い方」に注目しながら「名手仕込み」の視点で追うと、捕ってから送球までの一連の動作に確かに無駄がない。熊谷は言う。
「一番自分が楽な、動ける位置を探して、そういうトレーニングをしながら…。それを継続して、今のところはうまくいっていると思います」
とりわけ「神足」を際立たせてきた熊谷だけど、磨きがかかったその守備力がチームを救う時が必ずくる。この話の続きは、そんな試合を見た日にとっておきたい。=敬称略=