「普通」が一番難しい

 【3月30日】

 84本と164本。昨シーズンのTG両軍の本塁打数である。もちろん…という言い方は語弊があるが、倍近く多い方が巨人軍のそれだ。しかし、ペナントレースの結果はご存じの通り。

 阿部慎之助は、じゃあ、どんな野球をするのか。自身も本塁打を量産したクリーンアップヒッターだった。しかし、花火合戦を制しても勝てなければ虚しい。

 開幕戦はルーキー佐々木俊輔のショートへのゴロが野選を誘い、24年初の得点。それが殊勲打にもなった。それを「らしい」と阿部は言った。

 今年の巨人「らしさ」は花火ではないのか。開幕連勝を決めた巨人軍の新監督がこの日一番饒舌になったのは、岡本和真と坂本勇人の連発よりも、松原聖弥の2点タイムリーについて聞かれたときだった。

 「今年は生まれ変わったようになっていますし、すごく野球を楽しそうにやっているんでね。使いようだと思いますし、僕らがなんとか後押ししたいと思っていますので…」

 なるほど、こういう選手は生かすも殺すも「使いよう」…なのかもしれない。そういう意味では開幕カードで生かされたのは、ちょっと嫌かも…。

 松原といえば大阪出身で、ブレークした年に当欄でも紹介した。実兄がお笑いコンビ「ロングアイランド」のツッコミ担当・松原侑潔(ゆい)で、しょっちゅう球場へ応援に来ていることも…。仙台育英時代は熊谷敬宥の1学年先輩だったが、スタンドが主戦場。だが、大学を経て育成契約を結ぶと、努力が実を結び、21年に育成出身新記録となるシーズン12本塁打をマーク。が、長続きしなかった。

 翌22年は打率・113、0本塁打と低迷。すっかり、松原の名を聞かなくなった…と思っていたら、彼を再び生かす監督が就任した。

 今年2月末の沖縄のオープン戦(GT)で3安打を放つ松原を見たのだが、このときも阿部は饒舌だった。

 「(松原は)キャンプで徹底して反対方向に打ってるんでね。その成果が出てよかった。でも、あいつはすぐ忘れちゃうんで…(笑)」

 確かに、沖縄での彼の安打はすべてセンターから左だった。そして、この夜はセンターへ殊勲打…松原は自分らしさを忘れず「僕を使って!」と、阿部にアピールしているように見える。

 「(阿部監督から)『どうせ打たれへんと思ってた』と言われました」と笑う「帰ってきた松原」である。

 なんだ、なんだ、巨人軍のコラムなんて読みたくないぞ!と、お叱りを受けるかもしれない。いや、僕がきょう書きたかったのは、沖縄で巨人を取材したときの阿部の言葉である。

 「やっぱり、普通にやるというのが一番難しいことなんです」

 今年の巨人らしさとは、ドカンドカンとスタンドへ…ではなさそう。

 「普通にやる」?ちょっとそれ、どこかで聞いたことが…

 「普通にやれば勝てるんやから」

 岡田の標榜である。虎も「らしさ」に立ち返ればいい。=敬称略=

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