なぜかうまくいったこと
【4月2日】
村上頌樹のキャリアを振り返れば、大舞台に強い男。もしや緊張とは無縁?いや「いつも、めちゃくちゃ緊張します」という。じゃ、なぜうまくいったのか?そう聞けば彼は言った。
「なぜかうまくいきました」-。
キャンプ中、そんな話をした。
じゃ、この大事なホーム開幕戦は?
なぜかうまくいかなかった…ということになるのか。
3回7安打5失点(自責1)で降板した。初回、先頭打者の度会隆輝に与四球。味方拙守も重なり、いきなり4失点。こんなことはベンチもファンも想定したくなかった。仲間のミスをカバーする「虎の村神様」を昨年何度も見てきただけに影を潜めた「らしさ」を憂う。シーズン初登板、その一度の失敗であの言葉を使いたくないけれど…昨シーズンのMVP男だから、必ずいわれる。
2年目のなんとか…。
いやいや、村上は4年目だから…などと当欄は屁理屈を書いておくが。
6連戦の週アタマに投げる意味を本人はもちろん自覚している。オープン戦の浮き沈みは、本番への助走だから僕は気にしなかったが、こうなった以上、焦点は修正力…これに尽きる。現段階ではそんな思いでいっぱいだ。
「あまり自分から変えにいくことはない。相手がまだ何をしてくるかも分かっていないのに、去年良かったものをまた変えてやることはないよ」
自主トレを共にする青柳晃洋からそんなアドバイスを受けたそうだ。
昨シーズン良かったもの…
もちろん一つではないが、村上の名を押し上げた最上のストロングを今一度噛みしめてみる。
いうまでもなく、コントロールだ。
じゃ、この夜のそれはどうだったのか。キャンプ、オープン戦を見てきた限り、ステージを上げる努力があったように思う。ストレートの球威や質を向上させながら、生命線のコントロールを維持するためには?未だ聞けていないその答えは興味深いし、「新しい村上」をどんどん知りたい。
「チームとして、絶対負けてはいけない試合、絶対勝ちたい試合に勝てるピッチャーですかね…」
「理想の投手像」を聞けば、村上はよどみなく言った。
ご存じ、センバツ優勝投手である。
いつの世代でも負けられないマウンドで緊張しながら結果を出してきた。緊張のほぐし方を心得ているのかと思いきや、村上は首を横に振る。
「そういうのはないんです。緊張したままマウンドへ行って、初回をしっかり抑えられれば、そこからは段々落ち着くんですけどね…」
初回にあれだけの失点。となれば、落ち着きを得られるはずもないのか。緊張が解けないままの3イニング、65球…だったのかもしれない。
「力んでしまった」。試合後、村上はそう語った。「絶対勝ちたい」使命感が邪魔になったのだろうか。彼の強みは「力でねじ伏せる」ではないはず…。生命線を取り戻せば、2年目のなんとかはどっかへ消える。=敬称略=