不在の損失度をはかる
【6月12日】
オリックスは五回の守りからセンターが交代した。中川圭太に代わり、佐野皓大が就いたわけだが、その理由が気になった。何かアクシデントがあったのか。そうでなければ何だろう?
試合を見ながら当欄を書いている。中川は四回に走塁ミスがあった。1死二塁から太田椋の遊ゴロで三塁を狙ったが、木浪聖也が三塁へ送球して憤死。ベンチでオリックス監督の中嶋聡が渋い表情を浮かべていた。もしや懲罰交代の類いか?なんてあれこれ想像してみたが、どうやら太ももに張りが出たそうだ。今シーズンとにかく故障者の多いオリックスだけにアクシデントより懲罰のほうがまだ…なんて妙な心配をしてみたり。
中川に代わった佐野だけど、この夜の初打席で犠打をしくじった。
五回無死一塁の戦況である。
バントが投手前に転がってこれを大竹耕太郎が好フィールディングで二塁へ。1-6-3の併殺になった。
「佐野選手が一塁へ全力疾走してなかったことが気になりましたけど」
カンテレの放送席に座っていた野茂英雄がお馴染みの低いトーンでそう語っていた。
確かに俊足の佐野にしては悠々アウトになった。走路でちょっと足を滑らせたようにも見えたが、この場面でも痛めていなければいいが…と、敵軍のベンチを思いやってしまう妙な感じの夜だ。離脱者の顔ぶれを見れば、もはや気の毒というレベルではない。山下舜平大、宮城大弥、平野佳寿、山岡泰輔、山崎颯一郎、森友哉、福田周平…リーグ4連覇を目指すオリックスが苦難を抱えながら浮上を目指す6月戦線である。
阪神は前カードで西武を3タテ。連勝街道の期待感をもって臨んだ関西ダービーだったが連敗。オリ7連勝の引き立て役になった。
そりゃ、そんな簡単ではない。
だって、こっちは4番不在がやはり歯車を…。信頼厚い近本光司が本来のポジションで輝けない日々は、指揮官が最も想定したくなかったことかもしれない。猛虎の離脱者は大量ではないが、ダメージはでかい。
「試合に出る以上はバッティングだけではなく、守備、走塁、他のところもやることは沢さんあるので…」
この日、鳴尾浜のオリックス戦でヒットを放った大山悠輔は虎番の取材にそんなふうに答えたそうだ。
キレを取り戻すこと。それがファーム調整における主砲の命題と聞くが、開幕時からフィジカルがずっと万全でなかったと僕は見ていた。責任感の強さゆえ、だましだまし試合に出続ける中で本領から遠ざかる。そんなジレンマに苦しんでいたかもしれない。
かつて大山は言っていた。
「もちろんケガはしちゃいけないんですけど、ケガをしたときに、ケガをしないためにしっかり準備ができていたのかとか…そういう後悔がないようにしたいんですよ」
残りシーズンを悔いなく戦うために必要な時間。離脱してあらためて大山の存在の大きさをはかる。=敬称略=