虎と鯉の誇れるもの
【7月3日】
新井貴浩と「家族」の話になった。カープの監督には2人の息子さんがいる。縁あって幼い頃から彼らを知るけれど、早いもので長男はもう大学生。次男は高校3年生になった。
「もしかしたら観にいけるかも…。まだ分からないですけど」
高校球児の次男にとっては「最後の夏」。集大成の勇姿を見届けてやりたいと思うのは当然の親心だろう。
2年前の夏、同じく高校球児だった長男の応援に駆けつけたあと、新井は「自分の高校3年生、最後の夏を思い出しましたよ」と語っていた。
「家族」といえば、新井はカープを丸ごとそう呼ぶ。選手もコーチもスタッフもみんな…。が、どうだろう。よそから移籍してきた選手もすぐに「家族」になれるものだろうか。
この夜の両軍のスタメンを見ると、
ひとりづつ移籍組が名を連ねた。
カープは秋山翔吾。阪神は大竹耕太郎である。まだ移籍3年目と同2年目の彼らだけど、もう、すっかり馴染んで「外様」感がないようにも映る。
すぐ溶け込めるのは、これも時代なのか。選手の気質が昔と比べて少し変わってきたようにも思うが、どうだろう。阪神のチーム関係者を取材すれば「その時々のチームの体質や雰囲気によるんじゃないですか?」という。僕の知る限り、確かに今の阪神選手はみんなフレンドリーだし、ナイスガイ。
一方のカープも、日常的に取材しているわけではないが、同様に映る。
そのあたり、新井に聞いてみた。
「ウチですか?うん。やっぱりアットホームなのでね…。家族的な球団なので…。誰が外様で、誰が生え抜きだとか全くありませんし、すごく環境はいいと思いますよ。僕も一度外に出た身ですけど、カープの良さはすごく感じていますし、手前みそになるかもしれないですけど、そこは誇れますね」
選手の気質、球団の体質もそうだけど、やはりプロである以上、結束力を高めるにはグラウンド上の信頼関係も要る。両軍、そういうイイものが見えた第2ラウンドだった。
この夜、阪神は2失策、カープは1つの失策。ともに「カバー」を書きたくなったゲームである。
二回、阪神は小幡竜平が小園海斗のファウルフライを落球したが、これを大竹耕太郎がカバー。二ゴロに打ち取り、先頭の出塁を許さなかった。五回は菊池涼介の三塁線へのゴロを逆シングルで好捕した佐藤輝が、しかし、一塁へ悪送球してしまった。輝は天を仰ぐと、すぐさま大竹に近寄り声を掛けた。これを大竹が再びカバーできれば良かったが、矢野雅哉に同点三塁打を許した。が…しかし、その直後の六回に輝が2本目のアーチ。大竹への謝意をバットで表したかっこうだ。
カープは七回の矢野の失策をT・ハーンが後続を絶って、カバー。「ごめん」「大丈夫だ」。そんなやり取りが清清しかった。
岡田彰布が阪神監督最多514勝を達成した夜。鯉虎のゲーム差は「2」になった。両軍の結束が試される初夏を楽しみたい。=敬称略=