夏の甲子園で虎を見る

 【8月16日】

 夏の甲子園で虎の取材をする。岡田阪神が長期ロードに出掛けていても、それはできる…。どちらかといえば、この時期は、そっちがライフワークのようになってきた近年である。

 東海大相模の才田和空(さいた・わく)が広陵のエース高尾響(たかお・ひびき)を打った。決勝戦ともいえるこの好カードで勝敗を決する渋いヒットだった。

 五回表に広陵監督の中井哲之が動いた。大事な一戦で名将が先発のマウンドを任せたのは背番号10の左腕・山口大樹だったが、1点劣勢の中盤、ここで追加点を奪われれば致命傷になりかねない…。そんな思いで背番号1をマウンドへ。しかし、この継投を砕いたのが東の名門で1年秋からショートを任される才田のバットだった。

 東海大相模の背番号6……。

 実は彼の実家は甲子園から徒歩10分かからない鳴尾だ。西宮から神奈川への野球留学。それだけでも十分虎の香りが漂うが、深く掘れば、もっと出てくる。

 才田は小学時代、甲子園から程近い「浜甲タイガース」で野球を始めたそうだが、このクラブは阪神の元球団副社長で現在電鉄本社で要職に就く谷本修もプレーした名門である。そればかりか、この才能溢れる内野手は八木裕が監督を務めた18年選抜の「阪神タイガースジュニア」でも活躍。タテジマとの縁が何だかうれしくもなる。

 「そうなんです。教え子同士の対戦なんです。感無量ですよ…」

 そう言ってこの一戦に目を凝らす阪神球団の人間がいた。

 プロスカウト柴田講平だ。

 18年のタイガースジュニアで野手コーチを務めた柴田は、その狭き門のセレクションで才田を16人のメンバーに選抜した指導者だった。

 「今夏の甲子園で、あのときジュニアのメンバーが7人出ているんです」  柴田が「教え子同士の…」と言ったのは、広陵のキャッチャー只石貫太も18年タイガースジュニアのメンバーで、才田とチームメートだったから。

 さて、タイガースジュニア出身唯一の阪神選手といえばこの人……佐藤輝明である。今年はシーズン途中から4番を任され、彼らしいインパクトも残してきた。残り試合、輝の輝きがなければ、V争いの灯が心もとなくなる。

 そんなこんなで、きょうも名古屋に思いを馳せながら朝から甲子園へ…。

 「17日から最終セレクションがスタートします。取材お待ちしています」

 今年の阪神タイガースジュニアを選抜する阪神OBの森田一成である。実は今週、40人まで絞った同3次セレクションにお邪魔して、同ジュニアで野手コーチを担う一成に会ってきた。

 「監督の玉置さん(元阪神投手)を優勝監督にできるように頑張ります」

 一成は今冬の12球団ジュニアトーナメントで史上2度目のアレを誓ったが、僕はそれ以上に彼らの将来が楽しみでしょうがない。輝とおなじく西宮で少年時代を過ごした相模の才田、そして広陵の只石も…。数年後の縁を楽しみにしたい。=敬称略=

関連ニュース

編集者のオススメ記事

吉田風取材ノート最新ニュース

もっとみる

    主要ニュース

    ランキング(阪神タイガース)

    話題の写真ランキング

    写真

    リアルタイムランキング

    注目トピックス