日銀の金融経済概況では
【11月17日】
阪神新監督の藤川球児は安芸の秋季キャンプを総括するTVインタビューでこんなふうに謝っていた。
「県の人には協力したいですけど、今日で終わりです。ごめんなさい」
高知さんさんテレビのクルーから、新監督の生まれ故郷で開催されたキャンプへの想いを聞かれたときだ。
「特別な感情はないと言えばウソになりますけど」と語ったうえで、年一度の安芸キャンプの集客に触れ…
「まずは観光旅行の方が来られていたんですけど…。今はもう最終日ですけど、阪神タイガースのユニホームを着たファンの方がたくさん来てくれたという意味では、12月、もう少しやっても、来られただろうし…」
20日足らずのキャンプでは地元に十分「還元」「恩返し」できていないかもしれない。申し訳ない…そんなニュアンスだったと思うが、実はそんなことはなくて高知の人は重々感謝しているのではないか。様々な意味合いで。
例えば、地域経済もそうだ。
「11月の金融経済概況」を発表した日本銀行の公表資料によれば、四国では四県の中で唯一、高知支店が同県の景気判断を引き上げた。他3県が判断を据え置く中、高知の景気は「観光がけん引」している。コロナ禍で冷え込んでいた県内施設の宿泊者数が例年並みに回復し、「しばらくこの傾向が続くものと見られる」(日銀高知支店長=日経新聞)という。
出向いた者の実感としては宿泊と移動に苦労した。手頃なホテルが軒並み満室。オンラインの旅行サイトでは埒が明かず、長年世話になる宿に直接電話して何とか面倒を見てもらったり、帰りの飛行機もキャンセル待ちでギリギリ…。日銀の概況「全て」がそうとはもちろん言わないが、「球児阪神」の経済効果を随所に感じた。
さて、その新生阪神が帰ってきたホーム兵庫県はこの一カ月間、日本全国から注目を浴びた。僕は龍馬空港から満席の全日空機で伊丹に降り立ち「兵庫県知事選挙」の投票所へ。過去最多7人の候補者の中から一票を投じたわけだが、正直、迷った。情報が錯綜していたこともあり、最終的にはネットで候補者の肉声を探し、できるだけ、見て聞いて選ばせてもらった。
「言葉」で決めるのか?僕はそうした。口では何とでも言える。嘘も、虚勢も、ええ格好も…。でも、表情を見て、言葉をよくよく聞けば、リーダーその人の品性や志がにじみ出てくる。ごまかせないと思っているので…。
言葉を大切にする阪神の新監督を近くで見させてもらった安芸である。藤川球児とは、どんなリーダーなのか。それを探し、伝えたい秋でもあった。
「秋の高知を満喫してもらえたのだとしたら、遠方から来たファンの皆さんにとっても地元の高知にとっても、凄く意味のあることになったのかなと思うのでそこは野球と切り離して、皆さんの人生が、豊かに過ごせる一環になったのだとしたら良かったですね」
言葉に本質が帯びる。キャンプ最終日にこのコメントを発信する球児に拍手を送りたくなった。=敬称略=