侍の自責流儀は脈々と

 【3月9日】

 鳥谷敬と能見篤史が少し遅れてやってきた。米アリゾナ州フェニックスのステーキハウス。リザーブされた大きなテーブルで藤川球児と金本知憲に出迎えられると、侍組の頬はほぐれた。

 第3回WBC、その予選Rを劇的に勝ち抜いた山本浩二ジャパンはアリゾナ合宿で決勝ラウンドに備えていた。

 13年春の回想だ。当時カブスに在籍した球児と野球評論家の金本が、日の丸を背負う鳥谷&能見を激励した夜だったが、いま思えば貴重な「虎色の決起集会」に同席させてもらった。

 球児はカブスのスプリングトレーニング中で、金本は解説の仕事で米国に滞在していた。二人はリラックスしながら鉄板を囲んでいたが、侍組はどこか顔をこわばらせていた記憶がある。心寄せるメンバーの会だったけれど、いつものそれではなかった。

 金本「やっぱり、違うか?」

 能見「いやぁ、違いますね」

 鳥谷「全然、違いますね…」

 代表戦の格別な緊張感についてそんなやりとりがあった。代表として既に2度それを味わっていた球児は「分かるよ」という面持ちで聞いていたが、確かに大会中「虎ではポーカーフェースの二人」が歓喜、絶叫するなど別人の振る舞いをしている印象だった。

 あれから13年が経った。3連勝でアメリカRへコマを進めた井端ジャパンを眺めながら、サンフランシスコの準決勝で敗れた第3回大会を思い出す。

 鳥谷が2次R台湾戦で九回2死から盗塁を決め、米国切符をたぐり寄せた山本浩二ジャパンだったが、準決勝のプエルトリコ戦で散った。結果的に走塁を失したかっこうの内川聖一が目を真っ赤に腫らすシーンが何度もVTRで再現されたが、現地AT&Tパークで目のあたりにした者からすれば、彼を戦犯のようにクローズアップするのは違和感があった。鳥谷の盗塁と内川の走塁。ともに大会後に様々な媒体で裏話が紹介され、真実がファンのもとへ届けられたが、勝負事の勝ち負けを分かつ因子のひとつに、そのチームに根付く、あるマインドがある。

 自責か他責か、である。○○のせいで負けた。そんな他責の空気が漂う組織は脆弱だし、たとえ結果に恵まれなくとも全員が自責で戦う組織は清清しい。あの伝説の台湾戦は試合前のミーティングを根拠にスタートを切った鳥谷だったが、あれこそ究極の自責。が、もしアウトだったら周囲がどんな反応をしたか当時気になったりもした。

 【ミスが起きたら、任せた自分が悪い。起きていることはすべて受け入れる。絶対に選手を責めるということがなかったので、萎縮、恐れはないわけです】

 これは世界一になった23年の日本代表ヘッドコーチ白井一幸が著書『最強の組織をつくるすごい思考法』(アチーブメント出版)で綴る栗山英樹のマインドだ。大谷翔平が引っ張る井端ジャパンにもその血が受け継がれているし、13年前の悔しさを知る能見が政権の一員であることも自責思考を後押しする。ヒリヒリする格別な舞台で恐れない侍は強い。=敬称略=

関連ニュース

編集者のオススメ記事

吉田風取材ノート最新ニュース

もっとみる

    スコア速報

    WBC

    イタリア2
    ベネズエラ4
    ローンデポ・パーク9回裏

    プロ野球

    主要ニュース

    ランキング(阪神タイガース)

    話題の写真ランキング

    写真

    リアルタイムランキング

    注目トピックス