フォワード・ルッキング

 1回、見逃し三振に倒れる福島(撮影・金田祐二)
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 【4月29日】

 GW明けに振り返ればこれが9連戦のベストゲームになるかもしれない。首位再奪取の主演は高橋遥人と岡城快生で決まり。紙面もそうなるが、ほかにも特別賞として選出したい選手がいる。

 福島圭音だ。近本光司の負傷離脱後この人が「1番センター」を担うわけだが、大事な9連戦の初戦は序盤に守備の反省があった。きょうは取り返したる…若さゆえそんな熱情でカッカしがちだけど、第2ラウンドは彼の「先見」が風穴を開けたように思う。

 開幕から4戦4勝だった山野太一を捉えた先制劇は岡城のプロ初安打が称えられるべきだが、値千金のメモリアルを呼び込んだのが福島である。 

 三回、2死無走者で打席に立った背番号92を見ながら唸った。あれは「冷静な一呼吸」だったと思う。

 1ボール2ストライクからフォークで誘われたあと、一旦打席を外した。

 なるほど。彼の胸を察してみた。

 福島は初回の打席で見逃し三振に倒れていた。追い込まれてから球審の右手が上がった外寄りのスライダーはぶっちゃけ、ボールだった。「低い」。自信を持って見送っただけに「えっ」という面持ちだったが、迎えた第2打席は追い込まれてから打席を外し、あらためて、脳内を整えているように見えた。きょうの審判は低めを取る。広くいくぞ。そんな目付けで外のカットボール、見送ればボール球をたたき、いぶし銀の打球をセンターへ…僕の勝手な見方だ。近本-中野、鉄板の1、2番がオーダーにいない中、福島-岡城の韋駄天コンビで、しかも2死無走者から決勝点を奪ったことは、指揮官藤川球児の目にどう映っただろうか。

 神宮の阪神ファンは皆、いい顔をしていた。超満員のこの景色を見る度に幸せな球団だなと思う。関東の虎党といえば、この日、千葉での交流戦のチケットが発売され、3戦ともビジター応援席が「即完売」したと聞いた。ZOZOマリンのロッテ戦はちょうど1カ月先だが、その頃の藤川阪神はきっと…ファンの先見はいつも温かい。

 昨今の物価高騰の余波は野球観戦にも影響が出るだろう。甲子園球場の阪神戦は20年と25年に入場料の価格を改定した。この先は未定だが、チケット代が安価になることはまずない。日銀総裁の植田和男が一昨日の金融政策決定会合で物価の上振れを警戒し、「ビハインド・ザ・カーブに陥ることがないよう政策を判断していきたい」と話していた。「behind the curve」とは物価の上昇など経済上状況の変化に対して「後手に回る」ことをいう。この逆は「フォワード・ルッキング=Forward Looking」。つまり、先を見越して金融政策を行うことを意味する。

 どんな業界、組織でも「先見」「未来を見越す視点」は尊い。虎将2年目の球児が岡城をルーキーで唯一開幕からベンチ入りさせていたこと、そして福島を3月末に支配下登録したこと、その全てがフォワード・ルッキング。

粘り強く先見に長けた福島の潜在性は先見に明るい球児の織り込み済み…だったのかもしれない。=敬称略=

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