僕も分からないので相手も…

 始球式を務め笑顔を見せる坂本花織さん(撮影・立川洋一郎)
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 【5月3日】

 作戦タイムに何を言ったのか。まさか「68キロ」の打ち方を指示したわけではないだろう。四回の攻撃前だ。野手を集めて円陣を組んだのは巨人軍。三塁のベンチ前である。

 輪の中心はオフェンスチーフコーチ橋上秀樹だった。その中身は記者席まで聞こえてこないが「やっつけるぞ」の矛先は当然分かる。とはいえ、厄介なのだろう。巨人に限らない。すっかり大竹耕太郎が「天敵」になったカープもしかりだ。

 大竹は移籍して4年目になる。各球団、アナリストを拡充させるデータ全盛時代。攻略マニュアルでもあれば、とうに出回っている。出回らないのはそれが「ない」からか。いや、彼のマインドに追いつかないのだと思う。

 7回1失点で2勝目を挙げた。七回に1点を失ったものの、代打坂本勇人に殊勲打を許さなかった。最後は内角へこの日最速の141キロ…体感160キロでも出ていたかのような空振りで3球三振に斬り、虎ばりに吠えた。

 ヒーローインタビューを終えた大竹に少しだけ時間をもらった。何を話したかといえば、坂本花織について…。

 始球式に登場した彼女は、ご存じ、ミラノ五輪銀メダリストである。世界を席巻した神戸っ子だけど、トリプルアクセルや四回転は跳べなかった。そんな話を伝えると、大竹から「じゃあ何を武器に勝負したんですか?」と聞かれた。彼女いわく「出来るもののクオリティーをいかに上げるか」に没頭し、その「クオリティーにこだわることに集中した」。専門誌で得た情報を伝えると、「へぇ」と感心していた。 150キロの速球を持ち合わせないあなたに通ずるのでは?そんなふうに聞けば、「確かに…」とも言った。

 さて、ここからが本題。きょうは、いつも以上に緩急を意識した印象だった。最遅は68キロ。これって練習中に「あと5キロ遅くしよう」など、クオリティーにこだわることはあるのか。

 「本当にテキトーなんです。塵を塵箱に入れるときって何も考えないじゃないですか。その感じ。そこに意図もないし、なんとなく投げるんですよ」

 じゃ、相手に分かるわけないか…。

 「僕も分からないので、相手も分からないかもしれませんね…」

 打者の反応を見ながら…だよね?

 「相手とはしっかり対峙します。でも、具体的にこうだというのはないんです、本当に。なんとなく、こう投げたい…直感と言われるやつですかね」

 これは、敵の戦略班泣かせだ。

 この日、僕が朝9時半に甲子園に着くと、ちょうど関係者口にタクシーが止まった。球場入りしたのは橋上…四回に円陣を組んだ巨人のオフェンスチーフコーチだ。まだ阪神の練習も始まっていないタイミング。こんなに早く来て何を?と聞くのも野暮だけど、巨人の関係者に確かめれば、「きょうの試合に向けてのスコアラーとの共有作業」だったそうだ。

 大竹攻略法??ごめんなさい。取材で突きつめた僕も分からない。本人でさえ説明がつかないのだから、結論…傾向と対策はありません。=敬称略=

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